本研究の目的は,銀河面上に偏在する再結合が優勢な残骸をプローブとして、加速粒子へのエネルギー注入量と加速プロセスの持続性を解明することである。 再結合プラズマでは熱的電子が低温なため,超熱的電子による電離効果がより検出しやすいことを期待した。ただし,再結合プラズマは電離平衡にむかい緩和するため,加速粒子による電離過程と,緩和期における再結合過程の切り分けが肝となる。 これまでに発見した再結合優勢な超新星残骸のうち,とくに明るいものについてX線スペクトル解析を行い,その電離構造を詳細に調べたところ,いずれも再結合が非常に進行していることが明らかになった。比較的年齢の進んだ残骸が多かったため,最も直径が小さく,再結合がまだあまり進んでいないと考えられる残骸を対象とし,同様の解析を行ったところ,この若いはずの残骸についても再結合が非常に進んでいることがわかった。 再結合の進行度合が大きすぎ,いずれの残骸でも初期の電離過程における加速粒子の影響のみを抽出することは非常に困難であることがわかった。しかしながら,昨年度から継続するプラズマコードの製作過程で,電離よりむしろ微細構造線を用いた輝線診断が,加速に注入される粒子の検出に有用であることを突き止めた。これは今後ASTRO-H衛星の研究対象となると期待する。 一方,残骸の年齢によらず再結合が非常に進行している事実は,再結合プラズマが進化の途上で急激に膨張し密度低下を引き起こしたことを示唆する。これは,再結合プラズマの起源が断熱膨張による急速冷却であることを示す。以上のように,本来の目的は達成できなかったが,再結合プラズマの起源に関する新たな事実をつかむとともに,将来別の手法で本研究の目的に再挑戦する糸口を得た。
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