2010年に河澄響矢(東京大学)と本研究代表者による研究の帰結として、デーンツイストの一般化が導入できることが分かった。通常のデーンツイストは曲面の上の自己交叉を持たない閉曲線に対して定義されるのに対し、この一般化は自己交叉を持ちうる閉曲線に対して定義される。この一般化の様々なヴァリアントの研究と、幾何的な側面に関する研究を行っている。今年度の成果は以下にまとめられる。 (1)河澄響矢(東京大学)と研究協力を行い、曲面の上の閉曲線の自己交叉を測るテュラエフ余括弧積と呼ばれる演算のテンソル表示について研究を行った。テンソル表示の最低次の項である-2次の項は、シェドラーの余括弧積と呼ばれる演算であることが分かっていた。今年度は、-1次と0次の項が零であることを証明した。一方で、1次以上の項は非自明な項が現れることが分かった。適当な付加条件の下で、これらの項を統制できるかが今後の課題である。 (2)矢口義朗(群馬高専)との研究協力による。与えられた群の有限個の直積への、組み紐群のフルビッツ作用について研究を行った。組み紐群における、デーンツイストの対応物に単純組み紐と呼ばれるものがある。単純組み紐の有限列で、全ての積が組み紐群の恒等元に一致するものへのフルビッツ作用の研究は、2次元組み紐の研究への応用がある。このことを鑑み、4次組み紐群の、対称群の4つの直積へのフルビッツ作用について、ある元の固定化群の生成系を明示的に得た。その他関連する計算を続行中である。 (3)研究協力者である河澄響矢(東京大学)と共同で、ジョンソン準同型とゴールドマン・テュラエフ・リー双代数に関する概説論文を執筆した。その中の一節で一般化されたデーンツイストについて解説を行った。
|