本年度は昨年度に引き続き、細胞運動に関する自由境界問題の進行波解および定常解の存在について考察を行った。まず、進行波解について述べる。昨年度は、対応する自由境界問題の界面方程式に、特定の異方性を入れた場合、進行波解が少なくとも二つ存在することを述べた。しかしながら、この場合は領域の形状が円板に限定される。そこで、本年度は円ではない凸形状の進行波解を作ることを目標とした。その結果、異方性の形状が適当な対称性を満たせば、凸形状の進行波解が少なくとも二つ存在することを示した。また、進行方向の先端に内部の密度関数の値が相対的に大きくなっていることが、数値計算から確認された。これは、数理モデルの観点で見ると、F-actinが先端で密集していることに相当する。次に、定常解の存在とその個数について述べる。なお、定常解は異方性が無い条件下で行った。昨年度の結果から、定常解は必ず球対称解であり、少なくとも2つ存在することが確認されている。本年度は、係数に適当な制限を加えた場合は、定常解の解の個数がちょうど2つであることを証明した。
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