研究概要 |
観測データの台風予測へのインパクトを定量的に評価するため,平成24年度にはアンサンブル同化手法を基にした観測データのインパクト推定手法を高解像度数値予報モデルに適用した実験システムを構築した.今年度は本実験システムを実観測データに応用し,2008年と2010年に北西太平洋海域を対象にして実施された国際的な集中観測実験(T-PARC2008, ITOP2010)における特別観測データの観測インパクトの評価実験を継続した. 観測インパクト推定に用いる観測データ評価時間を長くした場合,本研究で用いられる局所アンサンブル変換カルマンフィルタにおける観測データに対する局所化手法の影響で,観測システム実験において求められる実際のインパクトよりも過小評価されることが分かった.このため,アンサンブルメンバー数を50とすることでサンプリングエラーの軽減を図りつつ,通常のデータ同化実験に比べ大きめの局所化関数を用いることで,インパクト推定値の過小評価の改善に取り組んだ. 2008年,2010年の集中観測実験におけるドロップゾンデの観測インパクト計算を行い,統計的に台風予測の改善に有意な観測データについて調査を行った.結果として500hPa高度以下の風観測データが,台風の予測改善に比較的大きな正のインパクトを持つことが分かった.また位置としては台風の南側の観測データが有意であることが多いことが分かった.興味深い結果としては,2008年の特別観測データよりも2010年の特別観測データの方が,単位観測あたりのインパクトが大きく,より効率的な機動観測が行われていたことが分かった.これは今後の台風感度域推定に資する結果となっている.
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