研究課題/領域番号 |
24840048
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
堤 康雅 独立行政法人理化学研究所, 古崎物性理論研究室, 基礎科学特別研究員 (10631781)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 物性理論 / トポロジカル超伝導・超流動 / エッジ状態 / エッジカレント |
研究概要 |
微視的理論に基づくGor'kov方程式に準古典近似を行うことで得られる準古典グリーン関数の従うEilenberger方程式を解くことで、トポロジカル超伝導体・超流動体のエッジ状態を明らかにした。 超流動ヘリウム3B相のエッジ状態について、Mathematicaを用いて解析的な理論計算を行い、エッジに束縛された準粒子が形成するマヨラナコーンの性質とマヨラナフェルミオンによって運ばれるエッジスピンカレントの性質を明らかにした。 トポロジカルな性質の異なる超流動ヘリウム3A相とA相、B相とB相、A相とB相の界面におけるエッジ状態についても、解析計算と数値計算を組み合わせた研究を行った。その結果、特にA相とA相の界面ではクーパー対による巨視的角運動量とは逆向きにエッジマスカレントが流れることを明らかにし、巨視的角運動量とエッジカレントが独立であることを示した。また、A相とB相の界面でトポロジカルフェルミアークが形成されることも明らかにした。しかし、A相とB相の界面はエネルギー的に安定ではないので、次年度はA相とB相の境界が安定に存在するB相の量子渦についての研究へと発展させる予定である。 サイクリックd波超伝導が実現している可能性のあるPrOs4Sb12を念頭におき、サイクリックd波のエッジ状態についての数値計算による研究を行った。その結果、エッジ状態にトポロジカルフェルミアークが存在し、エッジカレントの流れるトポロジカル超伝導体であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画当初は念頭になかった超伝導体PrOs4Sb12のエッジ状態を研究し、トポロジカル超伝導体である可能性を指摘できたことは計画以上の進展であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
トポロジカルに性質の異なる超流動ヘリウム3のA相とB相の界面におけるエッジ状態に関して、今年度は単純なドメインウォールについての研究を行った。しかし、A相とB相は安定となる温度、圧力が異なるため、ドメインウォールは安定な構造ではなく、実験により制御するのは難しい。そこで、A相とB相の界面が安定に存在するB相の量子渦に注目する。高温、高圧下のB相の量子渦では渦芯がA相成分で埋められる渦が実現しており、量子渦まわりに安定なA相とB相の界面が存在する。この界面におけるエッジ状態を明らかにする。 重い電子系超伝導体UPt3がトポロジカル超伝導体である可能性についても研究を進める。UPt3で有力視されているギャップ関数のスピン状態はヘリカル構造であり超流動ヘリウム3のB相と同じである。一方でフェルミ面の北極と南極にポイントノードが存在することはA相と同じである。そのため、A相とB相の特徴を併せ持ったエッジ状態が実現することが期待できる。超流動ヘリウム3のエッジ状態に存在していることが知られているマヨラナフェルミオン、トポロジカルフェルミアークに注目して研究を進める。
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