研究課題/領域番号 |
24850005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平野 圭一 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (40633392)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 有機触媒 / 中性Lewis塩基 / パーフルオロアルキル化 / パーフルオロアリール化 / ハロゲンー金属交換反応 |
研究概要 |
申請研究の目的は、有機Lewis塩基触媒を用いることで、種々のホウ素-ホウ素・他原子間の結合を活性化し、多重結合への多元素導入反応の開発を行うものであり、これを実現するために種々の検討を行った。まずは、申請計画の通り、2-トリメチルシリルフェニルトリフルオロメタンスルホナートとフッ化カリウムから発生させたベンザインとビスピナコラートジボロンの反応による、1,2-ジボリルベンゼンの合成検討を行った。当初の予定どおり、種々のN-複素環式カルベン化合物をジボロン活性化の触媒として反応条件の検討を進めたが、全く反応性生物が得られなかったため、他のLewis塩基の検討も行ったところ、トリフェニルホスフィンを用いた際に、痕跡量ではあるが、目的生成物が得られた。今後は、更なる条件の検討を行うことでこの収率の改善を行う予定である。 一方、上記の研究の過程で他の興味深い結果を見出している。すなわち中性有機Lewis塩基であるトリフェニルホスフィンオキシドを用いると、ジエチル亜鉛が強力に活性化されてヨウ化アレーンやヨウ化パーフルオロアルキルのハロゲン-金属交換反応を介した亜鉛化反応が効率的に進行することである。既に、本現象を用いた銅触媒を用いるヨウ化アレーンのパーフルオロアルキル化反応を見出しており、今後はその更なる検討も併せておこなっていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請研究を達成する上で重要な点は、ベンザインの発生過程と有機触媒による炭素-ホウ素結合の生成過程の共存性であるが、これはまず系中にベンザインを発生させた後にジボロン及び中性Lewis塩基を加えることで各々の活性種同士の反応が可能であることを見出した。また、NHCは本反応には不適であることも見出したので、今後は他のLewis塩基の検討を集中的に行うことができる。 既出のように、申請研究であるホウ素の活性化に取り組む過程で、中性有機Lewis塩基によるジアルキル亜鉛の活性化とその反応開発への応用に関する興味深い知見を得ている。ホスフィンオキシドないしはDMPUなどの中性高配位型ジアルキル亜鉛を用いることで、強力なハロゲン-金属交換活性種を発生させることができ、ヨウ化アレーンやヨウ化パーフルオロアルキルおよびアレーンから速やかに亜鉛化体を発生させることができることを見出した。本活性種は官能基許容性が高く、種々の極性基存在化でも問題なく発生させることができる。またこうして発生させた亜鉛活性種は、合成的に非常に有用であり、既にクロスカップリング反応による芳香環へのパーフルオロアルキル基、パーフルオロアリール基の導入に成功している。このように、有機Lewis塩基による半金属、金属種の活性化によるいくつかの新反応開発において、順調な進捗がみられた。
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今後の研究の推進方策 |
ジボリル化反応に関しては、上記のようにNHC以外の中性Lewis塩基触媒を用いた検討を重点的に行う予定である。 また、申請研究の推進中に見出した亜鉛の活性化を利用した反応開発に関しては、既に見出されたクロスカップリング反応に加えて、SN2'やα,β-不飽和系への1,4-付加反応などによる様々な基質へのパーフルオロアルキル化およびパーフルオロアリール化反応への展開を推進していく予定である。また、パーフルオロアルキル化されたポルフィリンやフタロシアニンなどの機能性分子はこれまでにその報告例は少なく、その物性に興味が持たれている。本研究で開発した方法を用いてその合成を行い、物性評価を行うことも一つの目標とする。
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