本研究では、サーモクロミズムを示す新規の金属酸化物材料の開発を行うことを目的としている。固体物質の性質は、その結晶構造によって変化するため、結晶構造の設計・制御することは、材料開発において最も重要なことである。金属酸化物の構造を決定する要因として、構成原子のイオンサイズや原子間の共有結合性などがある。これらの要因を深く理解することで、既存の構造やそれに伴う物性を理解することができ、さらに新規の構造設計を行うことができる。構成原子のイオンサイズと構造の関係については、古くから調べられているものの、未だ明確になっていない部分も多い。前年度は、AA’BO4の組成に注目し、イオンサイズの比が大きいAとA'金属元素を選択することで、これまでに報告のない新規構造型を有するペロブスカイト関連物質の合成に成功した。 平成25年度は、さらに同じ新しい構造型をもつ新材料を多数合成することに成功し、放射光X線結晶構造解析と、中性子結晶構造解析を組み合わせることで、結晶構造を正しく解析することに成功している。さらにサーモクロミズム現象を理解する上で欠かすことのできない温度による構造の変化も高温回折実験から調べた。 一部の材料は空気中と真空条件下で加熱することにより色の変化が起こることを見出した。これは環境の変化に対するセンサーへの応用が期待される成果である。茶色と青色という大きな色の違いがあることは、センサーとして利用しやすい特徴であり、環境変化を反映した色の違いが明確に現れる重要な新材料の開発に成功したといえる。 開発した新材料について、電気伝導度測定を行ったところ、高い酸化物イオン伝導性があることもわかった。新材料を開発できた本成果は燃料電池材料などへの応用も期待できるものとなった。
|