研究課題/領域番号 |
24850011
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清川 謙介 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80632364)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 有機化学 / 合成化学 / アミノホウ素化 / アミノボラン / ホウ素 |
研究概要 |
本研究では、安定なホウ素-窒素結合の新規活性化手法を開発し、ホウ素-窒素結合切断に続く炭素-炭素多重結合への付加反応の開発を目指す。本手法により、一段階で炭素-ホウ素、炭素-窒素結合の構築が可能となり、アルケンやアルキン類から多官能性化合物へと容易に変換できるようになる。例えば、生成した有機ホウ素化合物は、鈴木-宮浦反応による炭素-炭素結合形成反応や、酸化反応によるアルコールへの変換に応用可能である。ホウ素-窒素結合の切断を足がかりに種々の変換反応を開発し、多官能性化合物の実用的合成法へと展開する。 本年度は、まず、金属触媒を用いた炭素-炭素多重結合に対するアミノホウ素化反応を検討した。その際、用いるアミノボランの設計、適する金属触媒のスクリーニングを行い、最適な反応条件の探索を行った。今後、本反応の更なる効率化を目指し、検討を行う。また、本手法により合成される有機ホウ素化合物からの多官能性化合物合成を試みる。例えば、従来法では合成が困難であった化合物群、特に機能性分子や生理活性物質等をターゲットとし、本手法の有用性を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とする反応に適したアミノボランは、ホウ素-窒素間の相互作用を弱めた基質であると考えられる。例えば、窒素上に電子求引性置換基を導入したアミノボランは、窒素の非共有電子対の電子供与能が低くなる。一方、ホウ素上に電子供与基を導入したアミノボランはホウ素のp軌道に電子が流れ込み、ホウ素-窒素の相互作用が弱まる。故に、これらの基質はホウ素-窒素結合が単結合性を示し、金属触媒による切断が可能になると考えられる。以上の設計に基づき、すでに種々のアミノボランの合成に成功している。現在、様々な遷移金属触媒および配位子を用いて、種々のアミノボランとアルケン、アルキン類との反応を検討している段階である。Pdをはじめ、Ni, Cuなどの遷移金属触媒を中心に検討している。配位子にはホウ素-窒素結合への酸化的付加を促進する電子供与性のホスフィン類やNHCを利用している。また、適宜、計算化学的手法を用いて反応の各段階の機構を考察しながら、最適な反応条件を探索する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、アミノホウ素化反応に適したアミノボランの設計、合成を行い、様々な遷移金属触媒および配位子を用いて、アミノボランとアルケン、アルキン類との反応を検討する。更に、本アミノホウ素化反応をさらに利用価値の高い反応へと展開する。まず、不斉配位子を用いてアルケンに対する不斉アミノホウ素化反応の開発を目指す。また、用いる配位子や反応条件により、反応の位置選択性の完全制御法を確立する。また、本反応により得られた有機ホウ素化合物を酸化的に処理することで光学活性アミノアルコール誘導体へと導く。一方、 鈴木-宮浦カップリングによるアミン誘導体合成や、二酸化炭素との反応で不斉アミノ酸合成へと展開する。以上のように、ホウ素-窒素結合切断反応を鍵反応とする、多官能性化合物の実用的合成法の確立を本研究の最終目的として本課題に取り組む。
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