昨年度の段階において、無機ナノシート分散液中におけるナノシート構造という最も基本的な情報が、一般的に明らかになっていないことが判明したため、引き続きニオブ酸ナノシートのin situ構造を明らかにするため偏光解消光散乱法により評価を行った。本年度は、新たに光散乱装置に偏光板を組み込み、散乱測定を行うことによりナノシートの分散液中での形状の評価を行った。これは、一般的な動的光散乱法では、異方性をもつ粒子の形状を評価することが困難であるためである。 大きさの異なる無機ナノシート数種に対して測定を行い、測定により得られた2つの拡散係数(並進拡散係数、回転拡散係数)から、いくつかのモデルを用いてfittingを行い、形状を評価した。その結果、多くの場合において、偏長楕円体により拡散係数を再現することができることを確認した。乾燥したナノシートの形状から推測されるモデルは、扁平楕円体(あるいは円盤)であるが、少なくとも扁平楕円体モデルでは2つの拡散係数を再現することができなかった。このことは、無機ナノシートが、水溶液中では板状ではなく、変形している可能性を示唆しており、無機ナノシートの柔らかさを反映している可能性があると考えている。しかしながら、本測定は、拡散係数の微妙な差異が、fitting結果を左右することから、より詳細な検討が必要であり、その他の測定法と合わせて今後検討する予定である。 本研究により、これまで明らかになっていなかった希薄溶液中における無機ナノシートの構造の描像がある程度明らかになったと考えられ、今後その他のナノシート系を調査することにより2次元高分子系あるいはシート状コロイド系における構造の普遍性を明らかにしたいと考えている。
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