有機合成プロセスの開発において、廃棄のない手法は環境保護の観点から重要である。当該研究は、金ナノクラスター触媒の「空気中、室温、塩基性溶液中において高活性である」特徴を活かし、原子効率の高い結合形成反応の開発を行うことを目的とした。当研究室で以前に見出された、金ナノクラスターAu:PVP触媒によるアミンのα-酸素化を、有機合成において有用な骨格形成へと応用した。 2-(メチレンアミノ)エタノール誘導体を、メタノール中、Au:PVP存在下にて、酸素雰囲気下で3当量の炭酸ナトリウムと共に加熱還流すると、2-オキサゾリンが収率37-55%で得られた。 本合成において、出発物質である2-(メチレンアミノ)エタノール誘導体は、オキサゾリジン誘導体に変換されたと考えている。そして、金ナノクラスターの表面において、分子酸素により、オキサゾリジン中間体の2位における酸化が、位置選択的に進行したと考えられる。本合成の出発物質である2-(メチレンアミノ)エタノール誘導体は、対応するアルデヒドとアミノアルコールからの脱水反応を行うことによって簡便に合成することができる。また、本反応によって合成される2-オキサゾリンは、生物活性化合物における重要なフラグメントである他、有機合成において遷移金属触媒と共に配位子としても広く用いられている。今後、本合成法が生物活性化合物や不斉配位子の合成に応用されることが期待される。
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