研究課題/領域番号 |
24860001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大石 義彦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90617078)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 流体工学 / 省エネルギー / 乱流 / 摩擦抵抗低減 / 混相流 / 気泡 / 計測 |
研究概要 |
(1)摩擦抵抗低減マッピング作成作業 低減マッピングの作成に当たり,光学計測法に基づく気泡乱流場の計測を実施し次の研究成果を得た. ・気泡群に着目し,気泡のクラスタ化が流れ場に影響するかを調査した.光学計測法及び画像処理法を用いて,気泡間相互作用について移流速度情報及び気泡サイズの定量的スケールを取得した.この結果,気泡サイズと平均移流速度および液相の壁面速度分布に違いがあることを見出した.本研究成果では気泡の輪郭抽出プログラムの開発の成功し,長さスケールを効率よく抽出することが可能となった. ・乱流チャネル内に微細気泡を混入させ,発達・未発達の境界層に流入する気泡の挙動を可視化実験した.未発達の乱流境界層には気泡は容易に流入するのに対して,発達した乱流境界層には気泡が混入しにくいことを観察した.本研究ではt-y投影画像解析法を開発し,個々の固体粒子や気泡の運動の軌跡を基に乱流イベントや気泡運動の定量化が可能となった.これにより,乱流イベントと気泡運動に関するデータマッピングが可能となった. (2)壁面せん断応力計測法の開発 壁面せん断応力計測のために,直接計測以外のせん断応力の定量計測を目指している.本年度では直接計測による光学技術を利用することを中心とし,基礎技術としてLaser Doppler Velocimeterの技術を応用させることで実現のための方向性が決まった.直接計測法のデータ収集を実施し,長時間のデータより信号処理を施すことで時間スケールの特徴量の取得に成功した.乱流統計量と摩擦抵抗低減の関係を議論することが可能となった.最終的に光学的せん断応力計測の校正に必要なデータ収集が完了した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・気泡の輪郭抽出プログラムの開発が進み,特徴抽出方法に必要な予算が削減できたため. ・バックアップで準備していたせん断応力の直接計測について平均値データの取得に成功したため,命題である低減マッピングの作成に一つ近づいたため. ・技術的に不足している光学技術について計測機器の企業より技術的協力を受けることができたため. ・当初の計画でも困難であることは予想できたが,光学計測によるせん断応力計測の見通しが立ったため. ・専攻研究者(慶応大学 佐藤洋平准教授)との技術交流を図ることができ,困難であると考えられたエバネッセント光による測定が実現する可能性が高くなった.ただし,同時に装置構成とノウハウの蓄積が必要であることが課題となった.このような他の研究機関との協力を受けることができ時間を圧縮することができたため.
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今後の研究の推進方策 |
せん断応力計測には高速流動場に適用した全反射型エバネッセント光顕微鏡による壁面近傍速度場計測システムの開発を目指すため,従来型の光学計測技術とノウハウを活用する.基礎技術にするのはLaser Doppler Velocimeter(LDV)の技術を利用する.LDVの光学システム市販ではなくオリジナルにすることでエバネッセント光に変更可能とし,計測を容易にした.気泡混合流体に適用した浅焦点型粒子画像流速分布計測法と組み合わせるこ とで気泡の有無を検知しながら速度分布を計測可能なシステムを構築する.LDVの技術を基礎にしたことで,光軸調整が容易になるだけでなく,粘性低層外の速度分布も計測できるため乱流成分の抽出可能となる範囲を拡大することが可能となる.本装置を基に境界層厚さや渦スケールの特徴を抽出し,気泡直径と乱流スケールとの関係性をまとめる. さらに,バックアップとして準備していた計測を実施する. (1)移流速度なども物理量を計測することで気泡と縦渦との時間応答、干渉の調査研究の実施.全反射型エバネッセント光顕微鏡せん断応力計測の検証と共に,縦渦構造と応力の関係を同時計測することにより,単に摩擦抵抗低減だけでなく乱流現象そのものの問題の解明にも貢献する. (2)人工縦渦はデルタ翼後端渦を計測し,渦と気泡のスケール比を細かく変化させて双方向相互作用(two-way interaction)の詳細データを取得する.気泡が縦渦のスパン方向間隔を拡大させることが可能である. 本計画を実施をより推進させるため,先行研究者との技術交流を行う.すでに慶応義塾大学の佐藤洋平先生の実験設備の見学や技術的アドバイスを得ており,今後も継続して実施する.さらに,東京理科大学との技術的な協力を得ることで実現の可能性をさらに高める.
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