研究概要 |
本研究では薄膜技術を用いてFeCoの格子を制御し、格子歪などを導入することで格子の軸比を変化させたときの磁気特性の変化を調べた。具体的には以下の検討を行った。(a)下地層による格子歪と磁気特性への影響調査 (b)添加元素による格子歪の導入と磁気特性への影響調査 本研究により、以下の内容が明らかになった。 1. Rh(100)下地層上にFeCoエピタキシャル薄膜を作製することができた。このRh/FeCo薄膜を200℃で熱処理することで、膜面直方向において比較的大きな保磁力が得られた。この保磁力は、Rh/FeCo/Rh/FeCo積層膜で報告されている保磁力と同等の値であった。 2. このFeCo薄膜の組織観察を行った結果、Rh/FeCo層界面近傍において、約10 nmにわたり格子縞に乱れが見られた。これはFeCo層内におよそ10 nmにわたり格子歪が導入されたことを示しており、Rh/FeCo界面ではFeCo層に歪が導入され、それによって保磁力が向上した可能性を示唆している。 3. 添加元素によるさらなる格子歪の導入を目指し、Rh下地層上にFeCo-XまたはFeCo-X-N薄膜(X=Zr,Mn,Cr,V,Sn)を作製した。その結果、c/aが最大で6%ほど増大したFeCo系薄膜が得られ、さらに膜面直方向に異方的な磁化曲線を示した。これは添加元素によりFeCo-X層のc/aが増大し、それによってc軸方向に異方的な磁気異方性を発現したためと考えられる。
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