近年テラヘルツ波は天文学やバイオなどの基礎研究分野だけでなく、医療・セキュリティ・非破壊検査などの産業分野でも注目を集めている。特に天文学などの基礎科学の分野では高感度なテラヘルツ波センサの開発が待たれているが、電波領域の技術の応用では周波数が高いため損失が大きくなること、光子のエネルギーが光赤外領域と比べて小さく半導体技術では十分な感度が得られないことが問題となっている。そこで本研究の目的は、超伝導体を用いたテラヘルツ波帯高感度分光カメラを開発することである。 検出器の動作温度はこれまでMKIDを動作させている1 K以下の極低温ではなく、機械式冷凍機で容易に持続可能な4 Kとしたい。そこで、バルクの超伝導転移温度が約16 Kと高く、また高感度化に必要な高品質膜が作製しやすい窒化ニオブ(NbN)を超伝導材料に採用した。 H24年度は超伝導転移温度の高いNbN膜を作成するため、多元マグネトロンスパッタ装置を用いて、放電電力、ガス圧、ArとN2流量比の3つの成膜条件を変化させながら成膜し、諸条件と超伝導転移温度の関係性を調べた。 その結果、放電電力dc: 150 W、ガス圧0.225 Pa、ArとN2の流量比10%で最も高い超伝導転移温度TC=15.7 Kを得た。このNbN膜を用いてMKIDを作成し、0.1 k-3.7 Kでの動作確認し、実用可能なことを示した。 また、位置分解能を下げる要因となるセンサ間のクロストークの原因がマイクロ波によるものであることを明らかにし、マイクロ波クロストークを低減できる構造を提案した。
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