本研究は戦後台湾都市における日本統治期の建築技術の継承に焦点をあて、その台湾人の生活習慣への影響関係を考察するものである。平成25年度は昨年度に引き続き、「揚げ床居室」と「鉄筋コンクリート補強煉瓦造」について考察を行った。 戦後に建設された都市住宅の中にある「揚げ床居室」を考察するため、台北市万華区に立地している南機場公寓第1期(1964年竣工)、第2期(1968年竣工)にてフィールド調査を実施した。昨年度考察したインテリアデザイン雑誌『摩登家庭』中の「揚げ床居室」は中、上流家庭の事例であったのに対し、南機場公寓は違法建築住民の住処として建設されたため、南機場公寓の「揚げ床居室」は比較的都市の下層民の事例として位置づけられる。そこでは「揚げ床居室」の呼称、使用方法、建設経緯などについて聞き取り調査を実施した。その研究成果の一部は論文集『2013 台湾建築史論壇 亜洲涵構中的台湾建築与都市』(東海大学・台湾建築史学会編、2013)に「戦後台湾新建都市住宅中「和室」的形成与風格変化的意涵」として発表した。 また、「鉄筋コンクリート補強煉瓦造」に関しては、台湾彰化縣田中鎮で建設された建造物の調査を実施し、現代の施工プロセスおよび同構法を選択する理由などについて聞き取り調査を実施した。また、台湾内政部営建署で文献調査を実施し、「建築技術規則」における「鉄筋コンクリート補強煉瓦造」に関連する条文の修正理由について明らかにした。これらの内容を整理し、2013年度日本建築学会年度大会にて「戦後台湾の建築技術規則にみる鉄筋コンクリート補強煉瓦造」を発表した。
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