研究課題/領域番号 |
24860024
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斉藤 一哉 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (40628723)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 展開構造 / 可変構造 / 適応構造 / 折紙工学 / 剛体折り |
研究概要 |
ミウラ折りに代表されるように,これまで様々な折紙のパターンが展開構造のデザインに応用されてきたが,これらの従来の折紙構造はヒンジで繋がれた各面が,変形しないという仮定(剛体折り)でデザインされている.本研究では剛体折り条件を満たさない一般的な平板の折りたたみモデルに関して,特定の要素に微小な変形を許容することで可変とする方法を提案し,さらにこれらの弾性変形を積極的に利用することで,構造全体を展開・収納させる新しい展開構造の開発を目指す.研究の初年度にあたる本年度は,上記の弾性折りメカニズムの解明を中心に取り組み,アクリル板を用いた簡単な展開モデルの試作を行った.得られた成果を以下にまとめる. 【部分弾性折モデルの開発】剛体板と弾性板からなる一般的な折りたたみモデルに関して,部材の弾性変形を評価するための簡易モデルを提案し,これを用いて新しい平板の折りたたみモデルの提案を行った. 【LS-DYNAによる展開シミレーション】汎用の有限要素解析ソフトLS-DYNAを用いて数値シミュレーションを行い,提案した平板展開モデルの展開性能を確認した. 【アクリル板による試作】アクリル板,市販の蝶番を用いて平板展開モデルの試作を行った.板厚の影響により,ヒンジ部で干渉が起こり予想された展開性能が得られないことが明らかになった.今後の研究では板厚の影響を考慮した新しいモデルの製作が必要と考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画として,申請書には以下の(1)~(4)の4つの項目を挙げている.それぞれの項目ごとの達成度に関して以下に述べる. 【1.剛体折りシミュレーションを応用した部分弾性折りモデル】剛体折りシミュレーションの手法を応用することにより,一部の部材に弾性変形を許容した際の変形量を計算するプログラムを開発した.この部分弾性折りプログラムを用いることで,平板の折りたたみモデルの代表的なモデルに対し収納から展開状態まで移行する際のひずみ量を計算し,現実のアクチュエータの変位量でも駆動可能なモデルを設計を行った. 【2.すべての要素を弾性板とした場合の弾性ひずみ量の解析】【3.有限要素法による形状可変シミュレーション】1の成果を基に数値モデルを作成し,有限要素解析ソフト(LS-DYNA)を用いて展開シミレーションを行い,これらの目的を達成した.本年度の解析においてはアクチュエータとして弾性バネ要素を用い,展開が可能であることを確認した.折線部を弾性ヒンジとしたモデル,及びBi-stable化による形状安定方法に関しては未検討であるが,これらも同様の手法で数値シミュレーションが可能であるため,今後は実験による検証と並行して効率的な解析を目指す. 【4.平板の弾性折りモデルの試作】まず,基礎的な検討として,アクリル板,市販の蝶番を用いて簡易モデルの試作を行った結果,板厚の影響により,ヒンジ部で干渉が起こり予想された展開性能が得られないことが明らかになった.この問題をクリアするため,厚みを考慮した新しい数値モデルの検討と,厚みの影響をキャンセル可能なパネル,ヒンジのデザインの検討を行った.平成24年度中の展開実験は間に合わなかったものの,アルミ板を用いて板厚の影響を考慮した新しいモデルの試作が終わっている. 以上より,計画はおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に大きな変更は必要ないが,当初予想していなかった問題として,数値モデルを実際の構造として製作する際,板厚の影響によって幾何学的条件の変化とヒンジの干渉が起こる問題が明らかになった.厚みのある板の折紙に関しては,他の折紙研究者も考察をしており,これらの先行研究を調査することによって,すでに解決策を得ている.今後は,これらの知見を如何にして設計に取り込み,効率的な方法で製造するかに関して,検討が必要である. 今後の研究においては予定通り機能実証モデルの製作に注力する.また本研究の実用性を高め多角的な視点で研究を進めるため、バイオミメティクス的視点も取り入れ,昆虫の羽,植物の葉の展開に関しても平行して研究をおこなう.
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