研究概要 |
本研究課題は,スマートグリッドに代表される階層型制御ネットワークのための通信プロトコルを確立することを目的としている.制御のための通信ネットワークでは,制御の安定性を確保するために通信遅延をある範囲内に納める必要があり,かつセンサーやアクチュエータなどの末端ノード数に対するスケーラビリティも確保する必要がある.現状のベストエフォート型通信ネットワーク等ではその条件を満足することが出来ない.そこで本研究の初年度目の研究課題として①「柔軟な同期技術を含むレイヤ横断設計された高効率な無線基幹回線の構築」や②「制御ネットワーク動作を保証するスマートな階層型無線回線の構築」と設定しました.課題①においてスマートグリッドの代表的な標準規格とされるIEEE802.15.4gを実装されるQualNetネットワークシミュレータを用いて,非同期型のCSMA/CA方式を用いる従来規格の特性評価を行った.その結果, ネットワークサイズの増大に伴い,パケット衝突によって所望ネットワーク特性が得られないことが確認できた.今後の課題として802.15.4gのMAC層に同期型マルチプルアクセス方式を導入し,特性改善を図る.また課題②において,電力の受給バランス制御をアプリケーションとした階層型分散制御回線を提案した.従来の集中制御では各スマートメータからコントローラへのアクセスにかかる遅延時間が長いため安定した制御を行うことが出来ない.そこで,制御対象をクラスター化しサブコントローラで制御させ,そのサブコントローラを上位のコントローラが制御するという階層型の制御を導入する.数値シミュレーションでは階層型分散制御の効果として5000世帯まで電力の受給バランス制御が可能となることを証明した.また,次年度の研究推進を図るため,IEEE802標準化会議に参加し,タスクグループ802.15の標準化動向をも視察した.
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今後の研究の推進方策 |
2年度目において,現在までの達成度に述べた課題を引き続き検討を行う.更に複数の情報フローが流れる無線基幹回線を想定し,ネットワーク上の送信電力・周波数・送受信ビーム等といった通信リソースを適応的に最適化し,ネットワークパーフォマンスを最大化する課題に取り組む.また,実現可能な検討成果の一部をIEEE802.15の国際標準化活動へ提案し,無線s制御ネットワークの新規格に寄与したいと考える.
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