研究概要 |
抗菌ペプチドは、従来の抗生物質に代わる医薬品や機能性食品素材として注目されている。本研究では、第一にタンパク質生合成への各ステップ(転写、翻訳、フォールディング)に対する抗菌ペプチドの影響を定量的に測定するアッセイ手法を確立する。次に抗菌ペプチドのタンパク質生合成の阻害作用を明らかにし、抗菌ペプチドの細胞内標的分子を精製・同定する。 昨年度に確立したアッセイ手法を用いて、本年度はモデル抗菌ペプチドであるIndolicidinと米由来抗菌ペプチドCL(K20A,K25A)およびAmyI-1-18のタンパク質合成阻害作用について検討した。その結果、Indolicidinは従来の報告にある阻害様式に加え、翻訳とフォールディングを阻害することが新たに判明した。また、各米由来ペプチドを本アッセイ手法を用いた評価した結果、CL(K20A, K25A)はタンパク質生合成を阻害しなかった一方、AmyI-1-18は翻訳とフォールディングを阻害することが明らかとなった。 次に、昨年度の研究において、従来の報告にある阻害様式に加えて、新たな阻害様式が判明した抗菌ペプチドPyrrhocoricinについて、磁性ナノビーズを用いて標的分子の分離とMALDI-TOF/MSによる同定を試みた。その結果、Pyrrhocoricinが標的とするタンパク質候補として、2種類のリン酸化酵素を分離・同定することができた。今後、Pyrrhocoricin以外の抗菌ペプチドの標的分子について、明らかにしていく予定である。
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