研究課題/領域番号 |
24860040
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
杉原 達哉 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90637539)
|
研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
|
キーワード | 切削加工 / 切削工具 / 機上再生 / 切りくず凝着 / 低融点合金 |
研究概要 |
切削工具の『切れ味』を工作機械上で再生するという新たな切削加工技術を創出・構築するという目的に対し,本年度はその具体的な手法,およびその実現可能性についての検討を行った. 本年度は特に,超硬合金製切削工具を用いたアルミニウム合金の切削加工に着目し,アルミニウム合金の加工における最重要課題である工具への切りくず凝着をターゲットとして研究を行った.まずアルミニウム合金のドライ加工切削実験を行うことで,工具すくい面上に生成する切りくず凝着と切削特性の関係について評価を行い,切りくず凝着の増大にともない切削抵抗の増大・不安定化,切りくず排出性の悪化といった問題が生じることが明らかとなった.さらに,NaCl溶液による電食反応を利用することで工具表面上の切りくず凝着を除去し,その工具で再度加工実験を行った.その結果,切りくず凝着を除去した工具では各種加工特性が回復することが明らかとなり,凝着除去による工具再生の可能性を見出した. また,工作機械上での凝着除去の方法として,工具へのダメージを最小限に留めつつ,すくい面上の凝着のみを除去できるような環境で加工を行うことで工具を再生するという,『凝着除去加工』についての検討を行った.凝着除去加工で用いる被削材として,快削黄銅や快削アルミニウム,樹脂材料など幅広い検討を行った結果,ABS樹脂が適切な材料の一つであることを明らかにした.さらに,延性の高い切りくず凝着を効率的に除去する方法として,低融点合金がもたらす液体金属脆化現象を援用する手法を着想するに至った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究実績の概要】で述べたとおり,本年度はアルミニウム合金切削における工具再生技術についての検討を行い,切りくず凝着が工具の“切れ味”にもたらす影響,凝着の除去による“切れ味”の変化,凝着除去加工の除去性能など,今後必要となる基本的な事項を明らかにすることができた.特に凝着除去加工についての検討過程で見出した低融点合金を援用する手法は,工作機械の機上再生技術への利用のみならず,幅広い展開が期待できる. しかしながら,本年度の成果は『機上再生技術』の根本的な手法の検討,およびその実現可能性についての基礎的な検証に留まっているのが現状であり,今後の更なる展開が必須であると言える.
|
今後の研究の推進方策 |
今後はまず,凝着除去加工における加工条件,加工時間などと除去性能の関係を明らかにすることで,本手法による工具再生技術を確立する.また液体金属脆化作用については基礎的な検討が不可欠であり,まず凝着に対する脆化作用とあわせて工具材料である超硬合金への影響を評価し,本技術への適用可能性を明らかにする.さらに,液量,温度,時間,応力分布など,脆化作用に影響を与える因子を明らかにすることで,効率的な除去方法の提案・構築を行う. 以上の検討の後,現有のマシニングセンタを使用したフライス切削加工に適用し,加工の進行に伴う凝着の生成 ⇒ 本手法による機上工具再生 ⇒ 再生工具を用いての再加工,といった一連のサイクルについて評価を行い,本手法の工具再生能力,および工具再生前後の切削抵抗,切削温度,切りくず形状などを評価することで本手法の優位性を確立する.それと同時に,複数回の再生を行った切削工具の加工特性変化の確認,工具の干渉を始めとした機上再生特有の課題の抽出を行う.
|