膜分離において、中空糸膜は平膜と比べて空間効率が非常に優れており、産業的にも水処理などで広く用いられている。しかしながら、中空糸膜の作製は内部液、ポリマー溶液、凝固液といった複数の液体を制御する必要があり、既存のマクロな作製装置では中空糸膜の高度な構造制御は困難である。本研究では、流体を精密に制御することが可能なマイクロ流路を用いた、微小構造を有する中空糸膜の作製方法に関する検討を行った。前年度は、フォトリソグラフィーにより十字状の流路構造を設計・作製し、非溶媒誘起相分離法(NIPS)法によるマイクロファイバーの形成に関する検討を行った。本年度は、中空糸膜を作製するためのマイクロ流路構造の設計・作製を行った。内部液と膜材料のポリマー溶液を合流させるための第一合流部、及びポリマー溶液と凝固液を合流させるための第二合流部からなるマイクロ流路を作製した。作製したマイクロ流路を用いて、内部液、ポリマー溶媒、凝固液の三相からなる管状流を形成させることができた。続いて、ポリマーに水処理用中空糸膜の作製に用いられるポリエーテルスルホン(PES)を用いて、NIPS法による中空糸膜の形成を試みた。流量、ポリマー濃度、凝固液組成を適切な条件に設定することで、中空マイクロファイバー構造を形成させることができた。本研究の成果により、マイクロ流路を用いた中空糸膜の作製に関する重要な知見が得られた。今後、従来の手法で作製した中空糸膜との構造や分離膜としての性能の比較評価を行う予定である。
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