愛媛県重信川流域の15地点において,2012年5月,8月,11月,2月に環境調査と河川底生動物群集の採取を行った。これらの調査地点は「流域」,「セグメント(流程)」,そして「リーチ(蛇行区間)」の3つの異なる空間階層スケールで種多様性を評価するデザインで選択した。環境調査は,水質,餌資源,流速,水深,河床材料など幅広く行った。2012年8月に採取した底生動物群集サンプルを,従来の顕微鏡観察に基づく形態学的種分類に基づく種多様性評価を完了したのちに,次世代DNAシークエンシング解析に用いた。このDNA分析では,まず各地点の生物群集試料から一度にDNAを抽出し,雑多な種が混在するDNAを対象にして,マルチプレックスPCRでミトコンドリアDNAのCOI領域(672bp)を増幅した。その後,雑多な種のPCR産物(アンプリコン)を,Roche 454 Sequencerを用いたパイロシークエンシング法に基づき,次世代DNAシークエンシング解析した。その結果,平均400bp長の塩基配列データを約17万配列を一度に作成することに成功した。この大規模DNAデータベースは引き続き実施される各調査地点の種多様性(種数)の評価に用いられる。具体的には,進化モデルと絶滅モデルを融合したGeneralized Mixed Yule-Coalescent(GMYC)モデルに適用することで,塩基配列間の非類似性に基づいて種の境界を定義して種数を定量化する。
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