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2012 年度 実績報告書

参照光が不要なホログラム記録を可能にする自己参照型ホログラフィに関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24860048
研究機関九州工業大学

研究代表者

高林 正典  九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (70636000)

研究期間 (年度) 2012-08-31 – 2014-03-31
キーワードホログラフィ / 結合波動理論 / ビーム伝搬法
研究概要

自己参照型ホログラフィは,参照光が不要な新たなホログラム記録方式であるが,これらの詳細な原理は明らかにされていない.本年度は,本技術の詳細な動作メカニズムを明らかにする目的で,以下の項目に関する研究を行った.
(1)結合波動方程式の導出     自己参照型ホログラフィで起こる読み出し光波内のエネルギー移動が,記録光と読み出し光の空間位相分布差や,相互作用するピクセル間の距離に大きく影響されることが明らかになった.これは当該手法を発明した当初に予想していた動作原理と概ね一致するものであり,単純化したモデルながら,このことを理論的に実証した意義は大きい.
(2)単一記録に関する研究     記録媒質の厚さや,記録時間,対物レンズの開口数がバランスよく決定された時に,高い品質の再生が行われることが明らかになった.特に記録時間と再生品質には興味深い関係があり,比較的短時間の記録でも高い再生品質が達成できることが新たに分かった.(1)で取り扱うことの出来なかったより現実的な条件を取り扱うことが出来たのは,今後の研究にとって大きな意味がある.
(3)多重記録に関する研究     従来手法との比較の容易さ等の理由により,ターゲットとする多重方式を当初予定していた位相相関型多重方式からシフト多重方式に切り替えた.シフト多重記録で重要となるシフト選択性に関する評価や,実際にシフト多重を実行するシミュレーションを行い,数μmのシフト間隔で数十枚のホログラムが多重記録可能であることを確かめた.多重記録数の増加に伴って再生品質が大きく劣化することも同時に確認されたため,多重記録に必要な各種理論(記録スケジューリングや変調符号)の早期確立も必要である.ホログラフィ分野の多くではホログラムの多重度をより増加させることが重要であるため,この研究に関しては今後も慎重に進めていく必要がある.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は,参照光が不要なホログラム記録技術に関する基礎的な研究として,(1)結合波動方程式の導出,(2)単一記録動作に関する研究,(3)多重記録動作に関する研究を行った.
(1)に関しては,当初の目的を十分達成できたと自己評価している.当初は結合波動方程式の導出のみを目的としていたが,実際に導いた方程式を数値的に解き,グラフ化することで動作原理を実証したという点でも,達成度は大きいといえる.
(2)に関しては,当初の目的を概ね達成できたと自己評価している.当初は数値計算と実験の両面から研究を行う予定であったが,最適な記録条件を明らかにするという目標を達成するために数値シミュレーションの方がより多くの事象を扱えるため,数値シミュレーションの研究を中心に行った.実際,数値計算では,当初目標としていたよりも多くの結果を得ることが出来たので達成度は高いと判断した.一方,基礎的な動作確認は実験によって行ったが,もう少し実験による結果を得る必要があると感じたので,本項目に関しての達成度は一定以上だが十分ではないとした.
(3)に関しては,当初の目的を概ね達成できたと自己評価している.ただし,他手法との比較の容易さや実験環境の理由で,当初想定していた多重方式と別の多重方式を採用したので,当初の目標との差異が出てしまった.しかし,自己参照型ホログラフィの多重記録方式は一つに限られるものではないため,本研究もまた今後の研究にとって意義深いものである.こちらも(2)と同様,シミュレーションに対する重みが大きくなったが,多重記録特性を調査するという目的は概ね達成できたと判断している.

今後の研究の推進方策

今後は自己参照型ホログラフィの具体的な応用システム(ホログラフィックメモリおよび暗号システム)を構築する計画であった.現在,研究計画に大幅な変更はないが,本年度数値シミュレーションによって行った自己参照型ホログラフィの基礎的な特性に関する実験的評価を今後の研究に含める.具体的には「記録時間と単一ホログラムの再生特性の関係」,「より高品質な再生を実現するための記録光分布の設計」,「シフト多重記録の各種特性」を研究する.これらの項目は,自己参照型ホログラフィの応用システムを構築するための光学系を利用して評価することが出来るので,研究目標の達成に係る時間に大きな差は生じないと予想される.また,当該応用システムを実験室レベルで構築する上で必要となる評価項目が生じた場合は,研究計画に支障が生じない範囲内で適宜行うことにする.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Self-referential holography and its applications to data storage and phase-to-intensity conversion2013

    • 著者名/発表者名
      Masanori Takabayashi and Atsushi Okamoto
    • 雑誌名

      Optics Express

      巻: 21 ページ: 3669-3681

    • 査読あり
  • [学会発表] 自己参照型ホログラフィにおける読み出し信号品質の改善に向けた記録条件の最適化2012

    • 著者名/発表者名
      高林正典
    • 学会等名
      Optics & Photonics Japan
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20121023-20121025
  • [学会発表] Multi-Level Self-Referential Holographic Data Storage2012

    • 著者名/発表者名
      Masanori Takabayashi
    • 学会等名
      International Symposium on Optical Memory
    • 発表場所
      Tokyo
    • 年月日
      20120930-20121004
  • [備考] Masanori Takabayashi

    • URL

      https://sites.google.com/site/ba841985/home

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公開日: 2014-07-24  

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