原子炉やめっき浴槽、軽金属作製工程など溶融金属液体で満たされた構造物は、壁や溶液中のパイプの疲労き裂及び熱の不均一性による部分腐食が安全性を確保する上で大きな問題になっている。溶融金属は高温であり、例えば高速増殖炉原子炉内の溶融ナトリウムの場合、動作中で600℃程度、メンテナンス時で200-300℃の高温であり、そのことが技術的困難の主な要因である。 非破壊検査法には様々な方法があるが、溶融金属が不透明でありなおかつ導電性を保持していることから、超音波を用いた非破壊検査が有力な方法である。高温であることから通常、超音波遅延線を使用されている。金属で構成された超音波遅延線によって探触子の耐熱性等の問題はなくなるが、遅延線からのノイズ信号が入り、信号特性が劣化すること、フェーズドアレイ化が困難なこと、測定装置が大掛かりになることが問題点である。 そこで本研究では耐熱性のある圧電薄膜をステンレス板上に直接成形し、信号特性の向上を図った。24年度においてはメンテナンス時を想定した200℃シリコンオイルバスの中での測定システムを構築を行った。耐久性もよく、多重反射による問題も確認されなかった厚さ200ミクロンのステンレス板を圧電薄膜を作製する基板として選択した。PZTベースの圧電薄膜が作製されたステンレス板に、直径35mm、厚さ1mmのステンレス管をはんだ付け又は高温接着剤により接合することで、200℃に熱的耐性のあるケーシングを作製した。室温から80℃の温度において、シリコンオイルバス中をジョイスティックによるマニュアル的に走査させることにより、厚さの異なる鋼あるいはアルミニウム基板の厚さ測定を行うことに成功した。この研究結果は平成25年7月にチェコで開催される国際会議での発表が予定されている。 別課題が25年度挑戦的萌芽研究に採択されたため、この課題の継続は辞退した。
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