研究概要 |
超音波噴霧法によるCu2ZnSnS4薄膜作製に向け、原料としてCuのアセチルアセトナト錯体、Znのアセチルアセトナト錯体、Snのアセテート錯体を選択した。これらのうち、Zn源とSn源は、酸化物薄膜の作製に用いたことがあり、それぞれの材料の分解温度や得られる酸化物薄膜の特性が既知である。一方で、Cu源については、この部分が不明であることと、Cu2ZnSnS4薄膜のp型化に大いに影響を及ぼすことが考えられることから、まずはCuのアセチルアセトナト錯体を用いたp型のCu2O薄膜の作製に取り組んだ。この結果、成膜温度や溶媒などの条件を最適化することで、ノンドープでp型のCu2O薄膜を得ることができた。これらの成果は、複数の国内学会で発表したほか、平成25年度中に国際学会においての発表や論文投稿を行う。 これらの結果を踏まえ、さらにチオ尿素をS源としてCu2ZnSnS4薄膜の作製を目指した。 XRD測定の結果、明瞭な結晶成長を観察することはできなかったが、EDS測定を行ったところ、OではなくSが選択的に取り込まれていることが分かった。Cu、Zn、Sn、Sのいずれもが取り込まれており、CZTSの薄膜が得られたが、それぞれの原料の分解温度や反応速度の差から、薄膜中の化学量論比が2:1:1:4とはなっておらず、成膜温度などの条件の最適化を行いながら、化学量論比と薄膜特性の相関を調べた。これらの結果は、現在のところ未公表であるが、取りまとめ次第、学会や論文などで発表の予定である。 平成25年度も計画通り研究を遂行する予定であったが、超音波噴霧法のメリットを活かしてCu2ZnSnS4にOを加えた、Cu2ZnSn(O,S)4薄膜の作製を目指した若手研究(B)が平成25年度から採択されることとなったため、本研究助成事業については辞退し、これらの研究成果を引き継ぎながら発展的に研究を遂行していく。
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