研究概要 |
赤外線アクティブサーモグラフィによるCFRP (Carbon Fiber Reinforced Plastic) の非破壊検査の高精度化、短時間化を目的とし、本研究ではフラッシュ加熱等の従来の対象物表面への加熱に代わり、誘導加熱による内部加熱を利用した検査方法に注目した。さらに、パルス・フェイズ・サーモグラフィに用いられる温度データのフーリエ変換による位相変換技術を組み合わせ、提案手法の有効性について評価を行った。 人工欠陥(平底穴形状、およびテフロンシートの挿入による人工剥離)を有するCFRP試験片に対する実験の結果、得られた温度画像では使用した誘導コイルの形状やCFRP中の炭素繊維の分布による欠陥部以外での局所的な異常発熱が生じており、これが欠陥検出の大きな障害となっていた。一方、温度データのフーリエ変換により得られる位相-周波数データから構築される位相画像では、画像周波数によっては上記の局所的な発熱の影響が低減される条件が存在しており、その周波数は検査時の加熱時間の逆数の周期となっていることが確認された。これは、加熱中の温度上昇時を含む温度変化データをフーリエ変換したことにより、変換後の位相値が加熱時間の逆数を周期とした周期変動を示し、これにより局所発熱部の位相値が周期的に健全部の位相値に近づく為であると考えられる。この局所発熱による影響の低減により、位相画像では温度画像にて検出が困難であった欠陥部の検出が可能となっており、このことは、誘導加熱を利用した検査において位相変換を行う大きな利点であるといえる。 上記の結果が得られた一方で、本手法により検出が確認された欠陥の深さは対象表面より1,2 mmであり、目的としていた検査能力の高精度化や検査時間の短時間化については、十分な優位性が確認できなかった。これらの点に関しては、更なる検討が必要であると考える。
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