12世紀初頭,クメールの古都アンコール(現カンボジア王国シェムリアップ州)に造営されたヒンドゥー教寺院アンコール・ワットは,東南アジアで最も規模の大きい壮麗な伽藍として知られている 。この伽藍は,須弥山を模す積層した基壇(以下段台基壇と呼ぶ)上に付属建物を含めて祠堂群を配置した複合ピラミッド式伽藍である。個々の建物の規模は小さいが,主要な建物を回廊でつなぎ,建物とその下の段台基壇を組み合わせて大規模な伽藍を構成している。本研究は,このような大規模なピラミッド式伽藍の形成過程において,段台基壇の構成と建物の配置に焦点をあて,伽藍構成と造営手法の変化について考察を行ったものである。
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