研究概要 |
本年度の研究を通して実現したのは、以下の2点である。①C-12(C,x)、C-12(Al,x), O-16(C,x)、O-16(Al,x)反応断面積の測定、②実験結果のシミュレーションコード開発へのフィードバック ①については、本研究で前年度に開発した測定システムを用いて、炭素・アルミなどの軽核の破砕片生成断面積を測定した。特に前年度に限られた立体角でしか測定できなかった点を改良し、破砕片の生成全量を測定することに成功している。測定の結果、100~400MeV/uのエネルギー範囲でLi-6~B-11(炭素入射の場合)、Li-6~N-15(酸素入射の場合)の間の生成核に対して断面積を得ることに成功した。 ②については、実験結果を放射線輸送計算コードPHITSの計算値と比較し、PHITSコードの改善点を究明した。そのうちの1点はアイソマーと基底状態核が1/2-1/2の確率で核反応から生じるという不正確な仮定がされていたことである。そのため、核データに基づき脱励起過程を正確に追跡するモデルEBITEM(ENSDF-Based Isomeric Transition and isomEr production Model)を開発しPHITSに実装した。また、今年度の実験値との比較では、軽い生成核(本測定ではLiなど)ほど生成が過小に評価されることが明らかになった。その原因が核反応の非平衡過程を再現するモデルJQMD(JAERI Quantum Molecular Dynamics)にあることを突き止め、今後必要な改善点を明らかにした。 成果公開も積極的に行い、筆頭投稿論文二報、国際学会講演三回(うち一回は招待講演)などの発表を行った。
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