研究概要 |
第一原理計算を用いて、カーボンナノチューブ(CNT)/金属異相界面の破壊メカニズムを評価するため、CNT/金属(ニッケル(Ni),銅(Cu), 白金(Pt))異相界面のモデル化を行い、その構造安定性を調べた。その結果、Ni, Cu, PtとCNTの間の安定な界面形成は、その金属とCNT間の格子定数の差(ミスマッチ)により異なる原子構造、安定性を示すことを見出した。 また、CNT/Niナノ複合材料を電解析出法(めっき法)により作製、硬さ試験を用いてその硬さを評価した。予備実験で作製に成功していたCNT/Niナノ複合材料は非常に薄いCNT膜に無電解めっきを用いてNiをコーティングしたものであり、硬さ試験に供することのできるだけの膜厚がなかった。当該年度は、CNTの電気泳動、CNT上のNiの電解めっき条件の最適化を行った。その結果、CNT濃度、電気泳動時の際の電圧、時間を制御することによりCNT膜の膜厚を制御できることがわかった。さらに、Niめっきの際のめっき条件を変化せることを通じて、硬さ試験ができるだけの膜厚を有するCNT/Niナノ複合材料の作製に成功した。実際に硬さ試験により硬さを評価した結果、作製したCNT/Niナノ複合材料は、CNT膜単独よりも25%高い応力を示した。 本研究は、CNT/金属間の異相界面の破壊メカニズムを格子定数のミスマッチから生じる「長距離相互作用」、電子状態の差異から生じる「短距離相互作用」の組み合わせによりモデル化する点が意義深い。また、その妥当性を実験を併用して評価するものであり、これまで乖離のあった計算と実験を繋ぐ重要な試みを含んでいる。当該年度で得られた成果からこれらを繋ぐ準備が整ったと考えている。
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