本研究では、カーボンナノチューブ(CNT)/金属異相界面の破壊メカニズムを第一原理計算および実験を用いて評価した。 前年度に構造安定化計算を行ったCNT/金属(ニッケル(Ni)、銅(Cu)、白金(Pt))異相界面モデルに対し、今年度はシミュレーション上で引張変形・およびせん断変形を加えることにより、その破壊メカニズムを評価した。引張変形を加えた結果、CNT/金属異相界面における破壊のしにくさは、Cu>Pt>Niの順番であった。すなわちCNT/Cu異相界面モデルが最も破壊しにくいという結果が得られた。その一方でせん断変形を加える、すなわち、CNT/金属異相界面モデルにおける金属部の変形のしにくさは、Ni > Cu > Ptの順番であった。すなわちNiが最も変形しにくいという結果が得られた。 一方実験では、前年度に引き続き、電解めっきによるCNT/Ni、CNT/Cu、CNT/Ptの3種類のナノ複合材料の作製の最適化を行った。その結果、硬さ試験を用いた強度評価ができるだけの膜厚を有する上記3種のナノ複合材料を作製することができた。これらのナノ複合材料を用いてCNT/金属ナノ複合材料の強度を硬さ試験により評価した。その結果、硬さはNi > Cu > Ptの順番であり、CNT/Niナノ複合材料が最も高い硬さを示した。 第一原理計算と実験結果を対応させると、せん断変形を加えた際の第一原理計算の結果と硬さ試験の結果が一致することがわかった。すなわち、少なくとも本研究で評価したCNT/金属ナノ複合材料に関しては、CNT/金属異相界面における破壊よりも、その金属部における塑性変形が変形を担っている可能性が高いことが示唆された。
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