研究概要 |
申請者は、単離葉緑体を利用した実験により、光照射により、葉緑体コードの転写因子Ycf30が葉緑体内の光合成代謝産物を感知することにより、核のシグナル伝達経路から独立した、独自のルビスコの転写制御機構を形成しているモデルを提案した。 このモデルをin vivoで検証するため、光照射時の代謝物量の変化を調べた。その結果、光照射時には、in vitro実験で、シグナルとして機能していると考えれたNADPH, 3-ホスホグリセンリン酸 (3-PGA)、リブロースビスリン酸(RuBP)を含む、多くの代謝産物が増加した。とりわけ、カルビンサイクルの代謝産物の増加は顕著であった。 そこで、ルビスコの転写活性化が顕著に起こる、高CO2から低CO2にシフトした時の代謝産物の分析を行った。その結果、光照射時に蓄積量の増加が観察されたカルビンサイクルのほとんどの代謝産物量とNADPH量は一定なのに対して、3-PGAとRuBPの顕著な増加が観察された。 これらの結果から、NADPHは、光照射時にYC30の転写を活性化するシグナルとして機能している可能性はあるが、CO2濃度の低下時にYcf30の転写活性化シグナルとして機能している可能性は低いと考えられた。それに対して、3PGAとRuBPについては、多くの代謝物の蓄積が観察される光照射時だけでなく、CO2濃度低下時にその顕著な蓄積が観察されたことから、Ycf30の転写活性化シグナルとして働いている可能性が高く、in vitroでのルビスコの転写活性化モデルと一致した。光照射やCO2濃度の変化に応答した、葉緑体内の3PGAとRuBP濃度の上昇を感知して、YCf30はルビスコの転写活性化を行っている。
|