研究課題/領域番号 |
24870007
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神田 真司 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50634284)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | キスペプチン / トランスジェニック / メダカ / イソトシン / バソトシン / 電気生理 |
研究概要 |
本年度は、キスペプチンによって制御される神経系の解析を行った。キスペプチン受容体がイソトシン、バソトシンニューロンに発現していることを既に示しているので、イソトシン、バソトシンニューロンにカルシウムインジケーターGCaMPを発現するトランスジェニックメダカを作成し、記録を開始した。また、キスペプチン受容体にGFPを発現するトランスジェニックメダカを用いたgpr54-1発現ニューロンの同定のための予備実験を行った。イソトシン・バソトシンニューロンを可視化したトランスジェニックメダカにおいて、導入したカルシウムインジケーター、GCaMPの発現が弱い一方、スクリーニングのために導入したDsRedの強い発現が見られた。これらのニューロンから電気記録を開始したところ、規則的な発火活動と周期的なバースト発火活動が見られた。現在、成育しているトランスジェニック個体が少ないためまだ記録数は少ない。次年度はこれらのトランスジェニックメダカを用い、キスペプチンのイソトシン・バソトシン神経系に対する生理作用を検証する。また、キスペプチンニューロンが神経支配する神経系を明らかにするため、受容体gpr54-1発現細胞にEGFPを発現するトランスジェニックメダカを作成した。EGFP免疫組織化学と、gpr54-1 mRNAのin situ hybridizationを行ったところ、gpr54-1 mRNAを発現している細胞を正確にラベルしていることがわかった。これらのメダカを用い、電気生理学的な解析を行なうと同時に、ニューロンの同定のための次世代シーケンサーの利用の準備を進めた。GFPを発現している細胞のみを単離することが可能となったので、次世代シーケンサーを用い、このニューロンの神経伝達物質が同定されることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに得られているトランスジェニックラインは、カルシウムインジケーターの発現が弱いものの、DsRedの発現は、パッチクランプを行う際に細胞を同定するのに十分な蛍光量であり、実際に電気記録に成功している。したがって、解析のためのトランスジェニックメダカの作成は、順調に成功した、と考えている。現時点では個体数が少ないが、次年度増殖したこれらのトランスジェニックメダカを用いて集中的に電気記録を行う準備は整っている。 また、受容体発現細胞を可視化したトランスジェニックメダカに関しても、細胞回収も行えるようになっている。次年度の早い時期に細胞回収、次世代シーケンサーを用いた神経伝達物質の同定を行えば、未知のニューロンへのキスペプチン制御も明らかにできる。これらの未知のニューロンに対するキスペプチン神経系の支配に関する電気生理学的な解析は、進展しているので、同定さえ出来れば、その神経支配の多くが説明出来ることになると期待される。 したがって、現時点で概ね順調に、予定に近い形で研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
完成したイソトシン、バソトシンニューロンを可視化したトランスジェニックメダカを用いて、電気生理学的にキスペプチン神経系による支配を検証する。当初は、導入したカルシウムインジケーターにより、カルシウム動態の観察を行おうと考えていたが、実際に解剖し、いくつかの生理学的解析手法を検討してみたところ、細胞体が比較的大きいこともあり、比較的簡単にホールセルパッチクランプ記録ができることがわかってきた。したがって、電流固定、電位固定法といった、電気生理学的な解析を主に、キスペプチンのイソトシン・バソトシンニューロンに対する作用のメカニズムを、より詳細に解析する。 次世代シーケンサーを用いた未知のニューロンの発現遺伝子の同定は、早い時期に行う。すでに細胞の単離方法は確立しているので、あとは一般的なプロトコールにしたがって、増幅、シーケンスを行う。これまでそろえてきたgpr54-1発現細胞の電気生理学的な解析と共に、キスペプチン神経系による視索前野ニューロンの支配のメカニズム、生理学的な意義を明らかにしていきたい。
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