本年度は、キスペプチンによって制御される神経系を、電気生理学的に解析し、また、分子生物学的手法によってキスペプチンによって制御される神経系の同定も一部行うことが出来た。 1. バソトシンニューロンへのキスペプチンの作用 バソトシンニューロンを可視化したトランスジェニックメダカを用い、電気記録を開始したところ、ルースセルパッチクランプ法で記録中にキスペプチンのペプチドを投与することにより、バソトシンニューロンの発火頻度が上昇することが明らかになった。発火活動以外への関与も考えられるので、カルシウムや転写制御など、さまざまな可能性の検討を開始している。 2. イソトシン・バソトシンノックアウトメダカの作成 TALEN法を用い、イソトシン、バソトシンのノックアウトメダカを作成した。今後の電気生理学的実験に用いることができる。また、表現型をキスペプチンのノックアウトメダカと比較することにより、この神経回路におけるキスペプチンの関与の度合い、重要性について検討する材料を整えた。 3. 次世代シーケンサーを活用したgpr54-1細胞の神経伝達物質の同定 前年度までに特異性の検証を行ったgpr54-1-EGFPトランスジェニックメダカのGFP発現細胞における神経伝達物質の同定を行った。次世代シーケンサーを用いたRNAseq法により、GPR54-1-EGFP細胞は摂食に関与する神経伝達物質を発現していることが示唆されたため、二重in situ hybridization法によって細胞レベルでの厳密な検証を行ったところ、終脳腹側野の摂食に関与するとされる神経伝達物質を発現するニューロンがGPR54-1 mRNAを発現していることが明らかになった。現在、この群に対するパッチクランプ記録およびキスペプチンの生理作用の検証を開始している。残りの群においても、同様の実験を再試行することにより、同定を行う。
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