本研究は、四肢動物の進化史において、鳥類の陸上から空中へ、そしてモグラ類の陸上から地中へといった生活圏の拡大イベントに大きく貢献したであろう胸部骨格の運動機能適応の進化を定量的に示すことを目的とした。本研究は、(1)様々な鳥類、モグラ類標本をCT撮像し、胸郭骨格の三次元形状を取得すること;その後(2)解剖によって胸筋の筋重量を計測し、筋の収縮力を見積もること;さらに(3)胸部骨格へ筋収縮力を与えたときに骨格内に分布する応力を解析し、動物ごとに羽ばたき運動への適応の度合いを定量化すること、の3つの工程を踏む。 平成24年度は本研究に必要な標本の収集、及び研究に必要な応力解析ソフトウェアVoxelconの習熟に宛てた。複数のモグラ類・鳥類の冷凍標本をCT撮像し、胸郭骨格の三次元形状を取得した。胸郭骨格の三次元形状と筋のデータを取得した標本から、随時応力解析を開始した。 鳥類の胸郭骨格では、骨格の関節部に比較的厚い非石灰化軟骨が存在する。非石灰化軟骨の三次元形状が応力分布に及ぼす影響について考慮する必要が生じた。そのため、平成24年度は鳥類の非石灰化軟骨の形態と骨格形態の差異についても別途研究を行った。この内容については、現在投稿準備中である。
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