本研究では、次世代シーケンサー・GJ-Junior(Roche)を用いて、外生菌根菌の塩基配列データの解読を行い、得られた大量の配列データに基づいて高解像度の外生菌根菌の分子系統樹を構築することを目指す研究を行った。 本年度は、主として、真菌類のシングルコピー遺伝子を増幅するためのPCRプライマーの開発を行った。まず、真菌ゲノムデータベースにおいて、ハラタケ亜門20種のゲノムデータを取得し、その中から、シングルコピー遺伝子96個の塩基配列を取得した。得られたシングルコピー遺伝子の塩基配列をそれぞれアライメントし、保存性の高い領域からプライマーの設計を行った.その結果,96個の遺伝子について450~650bpの配列長を増幅できるプライマーを開発することができた。次に、開発したプライマーの実用性について確認するため、開発したプライマーペアを用いたPCRを行い、次世代シーケンサーを用いて塩基配列の解読を行った。解析の結果、開発したプライマーはハラタケ亜門の種群を広く増幅できることが確認できた。 従来、真菌類の分子系統推定は数個程度の遺伝子の塩基配列に基づいて行われてきた。しかし、本研究の成果によって、100個程度の遺伝子の塩基配列に基づいて分子系統推定を行うことが可能となった。この成果は、従来、遺伝子数の不足や塩基配列情報の不足のために精度を上げられなかった真菌類の分子系統推定の研究において、ブレイクスルーになりうる成果である。今後は、開発したプライマーを用いて、実際に外生菌根菌イグチ目菌の高精度の分子系統推定を行う研究を行っていくつもりである。
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