研究課題
本研究は、マレーシア熱帯雨林に生育するフタバガキ科樹木の種子を、特異的に利用し繁殖を行う昆虫が、超年一斉開花型と言われる変動の大きな種子生産に対して、どのように適応してきたのかを進化的・生態的観点から探ることで、一斉開花現象の理解に不可欠なフタバガキ科-種子食昆虫の相互作用系の解明を目的として行った。まず進化的には、種子食昆虫の寄主利用の変遷を明らかにするために、主要な種子食昆虫の一つであるゾウムシ類について分子系統解析を行った。その結果、近縁なゾウムシ種は必ずしも近縁なフタバガキ樹種を利用しておらず、寄主の転換が頻繁に起こった可能性が示唆された。寄主の転換や拡大は、種によっては長期間種子をつけないフタバガキ樹種を利用する上で、メリットになった可能性がある。ただし、今回は系統解析に用いたゾウムシの種数が限られていたため、今後種数を増やして解析を行う必要がある。また生態的には、種子食ゾウムシが長い非結実期間を幼虫の休眠や成虫の長寿命などで乗り切っていると仮説をたて、その検証を行った。まず、種子散布後すぐに成虫として脱出するゾウムシと、種子から這い出し、土壌中で休眠する幼虫について遺伝子情報の比較を行ったところ、これらは全く異なる属(もしくは科)であることが分かった。休眠幼虫を羽化させることに成功していないので、これらの種や休眠期間は未だ不明であるが、飼育1年後でも7割以上が生存した。したがって、種子食ゾウムシは種によって、種子散布後すぐに羽化するものと、長期の休眠に入るものの2タイプがあることが分かった。一方で、種子散布後すぐに羽化脱出するゾウムシ類の生存期間は飼育環境下で最大3ヶ月であった。これらの種が、自然環境下では成虫で長期間生存できるのか、それともフタバガキ以外の寄主をもつのかを、今後明らかにする必要がある。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Forest Ecology and Management
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PLoS ONE
巻: 8 ページ: e79095
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10.1016/j.foreco.2013.08.057