研究課題/領域番号 |
24870030
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研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
萩原 義徳 久留米工業高等専門学校, 生物応用化学科, 助教 (10628548)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 鉄硫黄タンパク質 / 光合成 / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
初年度は、目的タンパク質の発現プラスミドの構築および精製系の確立を目的として以下の研究を行った。まず、2種類のシアノバクテリア由来のゲノムを用いた目的遺伝子の増幅を試みた。ゲノム情報をもとに4種類のプライマーを設計し、条件検討を加えながらPCRを行ったところ、目的遺伝子の増幅に成功した。その後、得られた増幅産物をタンパク質発現用プラスミドベクターに組込み、大腸菌のトランスフォーメーションを行い、遺伝子組換え大腸菌を作製した。この組換え大腸菌を用いて目的タンパク質の過剰発現を試したところ、驚くべきことに菌体が赤褐色を呈した。このことから、組換え大腸菌内で発現した目的タンパク質は、そのタンパク質内部に鉄硫黄クラスターを形成していることが示唆された。 この結果を踏まえ、過剰発現大腸菌からの目的タンパク質の精製系の確立を試みた。まず、培養液から大腸菌を遠心分離によって集菌し、ペレットを得た。このペレットを超音波破砕・遠心分離したところ、赤褐色の上清を得た。分光学的解析により、精製タンパク質が鉄硫黄クラスターを保持していることが示唆されたが、その安定性は芳しくなく、精製工程が進むにつれて、そのクラスターが分解・解離してしまった。今後は精製方法の改善を行うことにより、鉄硫黄クラスターを保ったまま精製可能な条件を見出す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究は、おおむね順調に進展したと考えられる。その理由は、目的タンパク質の発現プラスミドベクターの構築に成功し、さらにそのベクターを用いることによって、遺伝子組換え大腸菌から目的タンパク質を過剰発現することができたためである。また、その発現タンパク質の粗精製を行い、生化学的および分光学的解析によって、タンパク質内部に鉄硫黄クラスターを形成していることを示唆することができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた成果を踏まえて、以下の研究を進める。 ・精製条件の確立と鉄硫黄クラスターのリガンド残基の同定 精製タンパク質の分光学的解析により、精製タンパク質が鉄硫黄クラスターを保持していることが示唆されたが、その安定性は芳しくなく、精製工程が進むにつれて鉄硫黄クラスターが分解・解離してしまっていた。今年度は精製方法の改善を行うことにより、鉄硫黄クラスターを保ったまま精製する。また、目的タンパク質内の鉄硫黄クラスターのリガンド残基を同定するため、Cysを始めとするアミノ酸残基に部位特異的変異を導入する。目的タンパク質内に存在する5つのCysは他の生物種由来のタンパク質においても完全に保存されているため、まずは各々のCysをSerに置換した変異体を作製する。これら5種類の変異タンパク質を発現・精製し、紫外可視吸光スペクトルから変異タンパク質の鉄硫黄クラスター保持能を検討する。 ・精製タンパク質の結晶化とX線結晶構造解析 鉄硫黄クラスターを保持したタンパク質の結晶化条件をスクリーニングする。結晶化に成功した場合は、結晶化条件の最適化を行い、良質なタンパク質結晶を得る。さらに、放射光実験施設を利用してX線回折データを収集し、結晶構造の解明を目指す。
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