昨年度は、目的タンパク質の発現プラスミドの構築に成功し、目的タンパク質の精製を試みた。その結果、このタンパク質がその内部に鉄硫黄クラスターが含まれることを示唆したが、精製タンパク質の安定性が芳しくなかったため、精製工程が進むにつれて、タンパク質内部に保持されているとみられる鉄硫黄クラスターが分解・解離してしまった。今年度は目的タンパク質をより安定に精製することを目的として、以前の精製方法の改善を行った。一般的に鉄硫黄クラスターは、空気中の酸素に不安定である。このことを考慮し、嫌気ボックス内でのタンパク質精製実験を試みた。その結果、好気条件下よりも安定性が改善したため、今後は安定度の数値化、すなわち鉄硫黄クラスターの半減期を好気条件と嫌気条件で比較する。 また、目的タンパク質内のどのアミノ酸が鉄硫黄クラスターのリガンド残基として機能しているかを明らかにするために、変異導入実験も行った。発現プラスミドに部位特異的変異を導入し、目的タンパク質内のシステイン残基をそれぞれセリン残基に置換した。その変異タンパク質を精製し、生化学的および分光学的解析を行ったところ、すべてのシステインが鉄硫黄クラスターの保持に関わることを見出した。これまでの成果をもとにして嫌気条件下での結晶化を試み、目的タンパク質のX線結晶構造解析を目指す。
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