本研究では、モルフォゲンとして知られるWnt蛋白質の局在に着目し、それが細胞生物学的レベルで如何に制御されているか、また形態形成運動に重要だと考えられる細胞形態にどのように作用するかを主にアフリカツメガエル胚を用いて解析した。 1. これまでにヘパラン硫酸の微小構造がWntの細胞外分布を制御する可能性を見いだしていたが、ヘパラン硫酸鎖の修飾酵素NDST1に注目して過剰発現実験およびアンチセンスモルフォリノオリゴによる機能阻害実験を行った。この結果、N-sulfoの修飾を強く受けた微小構造はNDST1によって硫酸化修飾を受けている可能性が示唆された。従来ヘパラン硫酸鎖の修飾は単一糖鎖内でのドメイン構造が示唆されていたが、本研究から同一細胞表面上の微小構造単位で修飾の度合いが異なりうるという新たな可能性が示唆された。 2. 内在性のWnt蛋白質を可視化するために抗体作成を試みた。この結果、xWnt8、xWnt5a、およびxWnt11に対する免疫染色可能なウサギポリクローナル抗体を得た。現在これらの抗体を用いて内在性のWntの分布を解析中であるが、特に非典型Wntシグナルに関わると考えられているxWnt11については形態形成運動への関与を強く示唆する特異な分布を見いだした。
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