研究課題/領域番号 |
24870032
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
佐藤 亮介 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所・基盤生物研究部, 博士研究員 (00635592)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | IRES / 翻訳開始機構 / ポリオウイルス / 組織特異性 / 宿主因子 |
研究概要 |
本研究は、ポリオウイルスのIRES依存的翻訳開始機構を制御する宿主因子を同定し、機能解析を行うことで、ポリオウイルスの組織特異性に寄与するIRES依存的翻訳開始機構の素過程を解明することを最終目的とする。神経特異的に存在すると考えられるポリオウイルスIRESの宿主因子を、効率的かつ網羅的に同定するためには、複数の手段でアプローチすることが最も有効な手段であると考えられる。そこで本年度は、神経細胞特異的に発現・機能している宿主因子を同定するために、以下のような生化学的・分析化学的な実験系の確立に集中した。 1.in vitro翻訳系による解析:ポリオウイルスの強毒株および弱毒株由来のIRES依存的翻訳活性を測定する系を立ち上げた。また、神経細胞(SK-N-SH)を用いてin vitro翻訳活性を測定する系を確立した。 2,RNA pull-down法による網羅的な解析:λファージのNタンパク質由来ペプチドとGSTとの融合蛋白質、およびN蛋白質によって認識されるヘアピン型RNAであるboxB配列を用いたmRNA pull-down系を導入した。上記1で用いたレポーターRNAにboxB配列を挿入したmRNA を作製することで、IRES RNAのpull-down法を確立した。 3.siRNAライブラリを用いたハイスループットスクリーニング:真核生物の翻訳開始は多くのシグナル伝達分子によって複雑に制御されていることから、IRES依存的な翻訳開始機構についてもKinaseやPhosphataseといったシグナル伝達分子が重要な役割を果たしている可能性がある。そこで、IRESに間接的に作用するシグナル伝達分子を同定するために、ヒトのKinaseを標的としたsiRNAライブラリを利用したハイスループットスクリーニング系を立ち上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリオウイルスの組織特異性に寄与するIRES依存的な翻訳開始機構の素過程を解明するためには、神経細胞特異的に発現・機能している宿主因子を網羅的に同定する系を新規に立ち上げる必要がある。本年度は、計画していた3つの系を全て確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
神経特異的に存在すると考えられるポリオウイルスIRESの宿主因子を網羅的に同定するために、本年度は生化学的および分析化学的な解析系の立ち上げを行った。今後は、これらの解析系により単離したタンパク質群を、MS解析(LC-MS/MS)により同定する。また、同定した宿主因子が、ポリオウイルスのIRES依存的翻訳に寄与する真の宿主因子であるかどうかについての再評価を行う。一方で、当初はFirefly luciferase(Fluc)およびRenilla luciferase(Rluc)を用いたレポーター解析の導入を予定していた。しかしながら、Fluc(61 kDa)やRluc(36 kDa)は分子量が大きく、翻訳活性に与える影響やRNA pull-downにおけるbackgroundの増幅が予想される。現在は、FlucやRlucよりも強い発光強度を有し、低分子量(19 kDa)であるOplophorus gracilirostris由来のLuciferase(NanoLuc)を用いた系に移行中である。
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