本研究は、ポリオウイルスのIRES依存的翻訳開始機構を制御する宿主因子を同定し、機能解析を行うことで、ポリオウイルスの組織特異性に寄与するIRES依存的翻訳開始機構の素過程を解明することを最終目的とする。神経特異的に存在すると考えられるポリオウイルスIRESの宿主因子を、効率的かつ網羅的に同定するためには、複数の手段でアプローチすることが最も有効な手段であると考えられる。本年度は、昨年度に確立した生化学的・分析化学的なスクリーニング系を駆使し、神経細胞特異的に発現・機能している宿主因子の候補をいくつか同定した。 1.ポリオウイルスの強毒株と弱毒株の差異を利用し、強毒株由来のIRES依存的翻訳に必要な宿主因子について、in vitro翻訳系を用いた同定を試みた。 2.非神経細胞(HeLa)と神経細胞(SK-N-SH)の細胞抽出液を用いたin vitro翻訳系を駆使し、神経特異的宿主因子の同定を試みた。 3.RNA pull-down法により、強毒株由来IRES mRNAに特異的に結合する神経特異的宿主因子の同定を試みた。 4.シグナル伝達分子のsiRNAライブラリを用いたハイスループットスクリーニングにより、IRES依存的な翻訳開始に関わるKinaseやPhosphataseの同定を試みた。 最終的に、上記スクリーニングにより同定した宿主因子群が、真の神経特異的宿主因子であるのかについて、ポリオウイルス感染神経細胞(SK-N-SH)の細胞抽出液を用いたin vitro翻訳系により再評価した。絞り込んだ宿主因子がIRESのどの領域に結合するのかについて、生化学的アプローチにより評価した。
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