黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureusの自然耐性株を取得するため、各種抗生物質存在下で培養をおこなった。その結果、野生株(Newman株)よりも有意に生存・増殖能が向上し、薬剤耐性が向上した株を複数得た。特に、緑膿菌Pseudomonas aeruginosaの産生する抗菌性二次代謝産物であるpyocyaninについても自然耐性株を取得した。 緑膿菌と黄色ブドウ球菌の両種間の相互作用における株レベルでの多様性を明らかにするため、各種臨床分離株を用いて様々な組み合わせで共培養をおこない、増殖や二次代謝産物産生能への変化を解析することで相互作用プロファイルを解析した。緑膿菌PAO1株に対し、黄色ブドウ球菌の臨床株(メチシリン感受性株(MSSA)2株、耐性株(MRSA)3株の計5株)を作用させ、互いの増殖への影響を評価したところ、緑膿菌の増殖に黄色ブドウ球菌の存在は影響を及ぼさなかったが、緑膿菌は黄色ブドウ球菌の生育を阻害した。緑膿菌による生育阻害作用の効果は黄色ブドウ球菌の株によって異なったものの、薬剤耐性株であるかどうかとは関連が無かったことから、緑膿菌の産生する抗菌性二次代謝産物に対する感受性は薬剤耐性と特に相関はないと考えられた。一方で、黄色ブドウ球菌との共培養において、緑膿菌の二次代謝産物(pyocyanin)産生能が緑膿菌単独培養時に比べて変化し、さらにその変化は共存する黄色ブドウ球菌の株によって異なった。このことから、黄色ブドウ球菌は緑膿菌によって生育を阻害されながらも、緑膿菌の代謝に影響を及ぼしていることが示され、その作用も株レベルで多様性があることが明らかになった。
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