研究概要 |
ゲノムデータベース上に公開されているツェツェバエ(Glossina morsitans morsitans)のスキャホールド配列情報を用いて、ハエゲノム内に組み込まれた微生物由来遺伝子の検出を試みた。ゲノム配列を5 kb長に断片化し、全ゲノム情報が公開されている微生物(細菌・真菌群)のゲノム配列と共に一括学習型自己組織化地図マップ法(Batch-Learning Self-Organizing Map, BLSOM)により解析した。その結果、ツェツェバエ由来配列の約5%(67,654配列中3,901配列)が微生物由来配列と共にクラスタリングされ、微生物から水平伝播によって伝わった遺伝子候補として検出された。それらの外来遺伝子候補の由来微生物を門レベルで分類したところ、フィルミクテス門、プロテオバクテリア門、バクテロイデス門の細菌群が上位を占め、特にフィルミクテス門は全体の約半数を占めた。 先行研究では、ツェツェバエの共生細菌として知られるWolbachia属細菌の短い遺伝子断片(16S rRNA遺伝子、fbpA遺伝子、wsp遺伝子)がハエゲノム内に取り込まれていることがPCR法により偶発的に発見されている(BMC Microbiol. 2012)。一方、本研究では、5 ~ 40 kbの長い遺伝子断片が外来遺伝子候補としてゲノム配列の約5%で検出された。この結果は、ツェツェバエのゲノム進化において、共生微生物からの遺伝子資源の獲得が大きな役割を持つことを示唆している。現在、検出された外来遺伝子候補の両端の配列からその信頼性評価を行っており、タンパク質データベースを照合した機能予測解析により機能的遺伝子の特定を試みている。
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