研究課題/領域番号 |
24880009
|
研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
小松 知未 福島大学, 学内共同利用施設等うつくしまふくしま未来支援センター, 助教 (30634977)
|
研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
|
キーワード | 水田作経営 / 営農支援システム / 原子力災害 / 放射性物質 / 食品安全検査 / コメ流通 |
研究概要 |
本研究では、①水田作経営調査、②農産物検査・流通調査、③地域営農システム調査の枠組みで実態調査と結果分析を行った。また、水田営農再生システムに関する考察行うため、水田作経営、地域営農、食品安全管理等に関する文献を収集し、国内外の研究成果を整理した。 調査・分析の実績は下記のとおりである。①水田作経営調査では、伊達市農業者アンケート調査(伊達市産業部農政課との共同研究、全農業者対象、原子力災害前後の経営変化と今後の意向等)の調査表作成・配布・回収を行った。また、福島県内の水田作経営を対象とした営農実態調査を行い、水田作経営の展開方向について考察する基礎資料を収集した。 ②農産物検査・流通調査では、福島県「ふくしまの恵み安全・安心推進事業」における放射性物質の自主検査の実施体制について調査した。調査対象は、地域協議会(福島市、郡山市、石川地方5市町村)とした。また、福島県県北地方の農産物直売所を対象に、放射性物質検査機器の設置・運用体制を把握し、現況の安全検査・流通体制の課題を析出した。 ③地域営農システム調査では、伊達市を事例対象地域とした地域営農実態調査を実施した。調査対象は、住民組織(放射能からきれいな小国を取り戻す会)、稲作作業受託組織((有)穂有、構成員5名、水稲育苗・乾燥調製作業を受託している農業生産法人)と農業関係機関(伊達市産業部農政課、JA伊達みらい、福島県伊達普及所)とした。また、北海道を対象に、地域営農支援システムに関する実態調査を行った。調査対象は、十勝農協連土壌分析センター、(独)北海道立総合研究機構農業研究本部ほかとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、①水田作経営調査、②農産物検査・流通調査、③地域営農システム調査の枠組みで実態調査と結果分析を行い、それぞれ下記のようなデータ収集・取りまとめが完了している。 ①水田作経営調査では、伊達市農業者アンケートの配布・回収が完了している。この結果と、各種統計資料を用いれば、水田作経営が原子力災害により受けた影響と構造変動を明らかにすることができる。 ②農産物検査・流通調査では、福島県県北地方の農産物直売所を対象とした実態調査の結果の取りまとめが完了している。研究成果は、「農産物直売所における放射性物質の自主検査の意義と支援体制の構築-福島県二本松市旧東和町を事例として-」(『農業経営研究』日本経営学会)「福島県北農産物直売所の現状と課題-放射性物質検査体制を中心に-」(『農村経済研究』東北農業経済学会)として学会誌に掲載される予定である(査読が完了、最終原稿提出済み)。 ③地域営農システム調査では、実態調査の結果を取りまとめた論文の執筆が完了し、学会誌に掲載されている。(小山良太・小松知未「放射線量分布マップと食品検査体制の体系化に関する研究-ベラルーシ共和国と日本の原子力発電所事故対応の比較分析-」『日本農業経済学会論文集』日本農業経済学会、pp.215-222、2012年12月15日。小松知未・小山良太「住民による放射性物質汚染の実態把握と組織活動の意義-特定避難勧奨地点・福島県伊達市霊山小国地区を事例として-」『日本農業経済学会論文集』日本農業経済学会、pp.223-230、2012年12月15日。)
|
今後の研究の推進方策 |
調査・分析は、①水田作経営調査、②農産物検査・流通調査、③地域営農システム調査の3つの枠組みで行う。具体的な研究計画は以下の通りである。 ①水田作経営調査では、伊達市農業者アンケート調査の結果と、各種統計資料を用いて、水田作経営が原子力災害により受けた影響と構造変動を明らかにする。また、福島県内の水田作経営を対象とした営農実態調査を行い、水田作経営の展開方向について考察する。 ②農産物検査・流通調査では、福島県農林水産部と地域協議会を対象に、「ふくしまの恵み安全・安心推進事業」における米の全袋検査の実施体制について調査する。また、福島県県北地方の農産物直売所を対象とした実態調査の結果をとりまとめる。これらの調査・分析から、福島県内の産地における放射性物質検査機器の設置・運用体制を把握し、現況の安全検査・流通体制の課題を析出する。 ③地域営農システム調査では、伊達市を事例対象地域とした地域営農実態調査と、国際比較により原子力災害後の地域営農システムのあり方を検討するためのウクライナ共和国・ベラルーシ共和国調査を行う。伊達市における調査では、稲作作業受託組織と農業関係機関を対象とした調査を行い、農作業受委託の構造変化と新技術導入の条件を明らかにしたうえで、営農支援システムの展開方向について考察する。ウクライナ共和国・ベラルーシ共和国における調査では、研究機関・行政機関・集団農場および個別経営の調査を実施し、我が国における地域営農支援システムを検討するための基礎資料を収集する。 以上の調査結果をもとに、放射能汚染地域における技術普及・安全検査体制のあり方について総合的に考察し、その実施体制を組み込んだ水田営農再生モデルを策定する。
|