研究課題/領域番号 |
24880011
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 彩子 東京大学, 生物生産工学研究センター, 特任助教 (90633686)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 応用微生物学 / アミノ酸発酵 / タンパク質X線結晶構造解析 / 膜タンパク質 |
研究概要 |
グルタミン酸発酵菌であるCorynebacterium glutamicumのグルタミン酸排出を担うとされるメカノセンシティブチャネルNCgl1221のグルタミン酸排出機構を構造生物学的に明らかにすることを目的として、NCgl1221の大腸菌での発現・精製条件の確立と精製タンパク質を用いた結晶化を行った。 大腸菌で異種発現されたNCgl1221を精製度よく調整する方法を確立し、その後の結晶化スクリーニングにより、タンパク質結晶を得ることに成功している。しかしながら、良質なX線回折データを得るには至っていない。 また、大腸菌だけでなくC. glutamicumを宿主とした発現系も構築し、発現を確認している。 さらに、他のバクテリア由来のメカノセンシティブチャネルには存在しない、NCgl1221のC末のドメインが持つ役割に興味が持たれることから、C末ドメインのみの結晶化スクリーニングも行っている。 また、グルタミン酸非生産条件においてもグルタミン酸を排出できることが知られている変異型のNCgl1221についても大腸菌での異種発現系を構築し、その結晶化スクリーニングも進めつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NCgl1221は膜タンパク質であり、大腸菌を宿主とした異種発現や精製が困難であることが予想された。現在までに、NCgl1221の結晶化に用いることができるレベルでの精製法の確立に成功しており、結晶化スクリーニングにより、タンパク質結晶が得られている。しかしながら、得られている結晶の質は低いため、結晶構造の決定にはさらなる界面活性剤の検討や結晶化スクリーニング条件の検討など試行錯誤が必要だと考えている。 また、野生型のNCgl1221と並行して変異多型のNCgl1221やCorynebacterium特有のドメインであるC末ドメインの結晶化も進めており、結晶構造の決定に至れば、NCgl1221のグルタミン酸排出機構の解明につながると考えられる。 さらに、新たな発現系としてC. glutamicumにおける発現系も構築した。今後はこの発現系を用いたタンパク質精製はもちろん、in vivoでの機能解析にも用いることができると考えており、今後の本研究の発展に応用したい。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、メカのセンシティブチャネルであるNCgl1221の結晶構造解析を、野生型と変異型を並行して進めていく。これまでに試したことのない界面活性剤や結晶化条件を検討していくことで、結晶構造の決定に至るようなより質の良い結晶を得ることを目指す。 また、最近所属研究室において、C. glutamicumのグルタミン酸生産誘導条件における代謝フラックスの変化に代謝酵素のアセチル化やスクシニル化などの翻訳後修飾がかかわっていることが示唆されている。これまでにC. glutamicumにおいてNCgl1221がアセチル化などの翻訳後修飾を受けることは知られていないが、グルタミン酸生産の誘導条件下で構造変化を起こしてグルタミン酸を排出すると考えられているNCgl1221も、翻訳後修飾による調節をうけている可能性が考えられる。そこで、現在までに構築したNCgl1221のC. glutamicumでの発現系を用いて、NCgl1221がグルタミン酸生産誘導条件下、また非誘導条件下において翻訳後修飾を受けているかどうかを調べる予定である。 結晶構造解析だけでなく、in vivo, in vitroでの実験を総合して、NCgl1221のグルタミン酸排出機構を明らかにしていきたいと考えている。
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