奄美大島の森林生態系は、稀少な生物の生息地として重要であるが、近年、森林伐採、林道開発、外来種の導入、といった人為的な環境改変が、森林性生物の存続を脅かしていると言われている。一方で、島の暮らしには森林環境の改変は欠かせない。本研究は、保全指標種として有用な森林性のカエルに着目し、その保全に配慮した森林管理の在り方を提唱することで、奄美大島の森林生態系全体の効果的な保全につなげることを目的としている。 本年度は、餌資源の定量として、粘着トラップによる徘徊性昆虫類調査を行い、林齢と餌資源の関係を解析したが、分類群ごとに反応が異なり、一概に林齢との関係を言うことは難しいことが明らかとなった。環境改変の現状とカエルの生息パターンの関係については、解析方法に習熟した研究者と共同研究とし、環境要因からオットンガエルの生息適地を推定した。これらの結果について論文化を進めている。また、カエルの生息パターンを理解する際に必要な、行動範囲についての結果をまとめ、論文を発表した。さらに、カエルの餌動物である徘徊性動物量を林道と林内で比較し、論文として投稿した。
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