研究課題
本研究費の交付が年度後半であったため、年度前半に観測地の候補を選定し、現地調査の準備を進めた。インドネシア、スマトラ島リアウ州の泥炭湿地を対象に、現地調査・観測を開始した。伐採・火災・排水等の人為的攪乱を受けた調査地とその後にアブラヤシの植林を行った調査地を選定し、現地で測量を行い、地表面の高低差を把握したのち、地下水位の測定井戸群を設置した。これらの井戸からは、地下水位の測定とともに溶存有機態炭素・窒素や各種溶存物質の測定のための地下水を採取し、分析に供した。これらの分析は現在進めているところであるが、その結果から、人為改変を受けた程度で、各地点の水質等がどのように変化するかについて把握することができる。その他、泥炭地の炭素循環の解明のための基礎的データとなる土壌からの二酸化炭素放出・メタン放出等を測定した。またこれらの観測を現地で行える観測機器を整えた。また、共同研究者らは同泥炭地において、シロアリなどの分解者の時空間分布とその活動量の調査を行っており、今後これらの調査結果と併せて、攪乱を受けた泥炭地における物質循環の詳細を明らかにできるものと考えている。観測は、現地の大学の講師や学生と協力して行っている。測量や各種観測の方法を指導することで、彼らの協力の下で継続して調査を行える体制を整えた。これまでに、2012年11月、2013年1月、3月と2か月の間隔で観測を行っており、今後もこの間隔で調査を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初は現地での調査ビザ取得などに時間がかかり、観測の開始が予定より遅れたが、現在は、観測体制も整い、現地カウンターパートの協力の下、円滑に調査を進められている。次年度もこの体制を維持しつつ、さらに観測項目を増やす予定である。
人工林の管理状態(伐採・植栽後の年数)ごとに、土壌表面からの二酸化炭素放出量、メタン吸収/放出量を測定し、その時間的・空間的な変動パターンを把握することを継続する。同時に、土壌の物理化学特性(水分条件や土壌の粒状構造、無機態窒素など理化学性)について調査し、ガス放出量の時空間変動パターンとの相関を探る。同時に、二酸化炭素やメタンの放出に寄与するアリやシロアリの群集構造の調査を行い、これら分解者の環境変化への応答が、有機物分解などを通じて上記のガス放出の時空間変動パターンとどのように関連しているかについて評価する。特に次年度は観測頻度と観測項目の拡充を行い、次年度に申請する予定である新規科学研究費の観測の基礎を作ることを目指す。本研究の特徴であるアリ・シロアリの分布調査と、土壌ガス放出/吸収量評価の同時調査体制を確実にする。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Journal of Tropical Ecology
巻: 28 ページ: 557-570
10.1017/S0266467412000569
Theoretical and Applied Climatology
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