研究課題
木質バイオマスの生分解過程を包括的に理解するためには,その構造を精密かつ定量的に捉えるとともに,分解過程の変化を分子レベルでモニタリングすることが重要である.これまでに,バイオマス試料を可能な限りインタクトな状態で丸ごと溶液NMR法に供し,二次元NMR 測定(1H-13C HSQC)により木材細胞壁内部の分子構造を原子レベルで観測することに成功している.本研究では,複雑で多様な分子を含むバイオマス試料において,二次元NMR法を用いて高分解能に各成分を識別しつつ,定量的に見積もることを達成するため,各成分の緩和過程とスピン結合状態の相違に由来するシグナル積分値のばらつきをなくし,定量分析を達成する方法論の開発を行った.2次元NMRにおいて,結合構造の多様性により定量性が損なわれることが知られている.我々は,1H-13C TROSY 法を駆使して結合定数1JCHの相違により生じるNMRシグナル積分値のずれを補正し定量化する新規手法を開発した.しかしながら,多様な混合物や高分子の末端と内部構造を包括的に測定するためには定量性は十分ではない.特に,バイオマス分解過程においては,分子量が大きく異なる分子の混合系の解析が必要になる.分子量の相違は緩和時間T2に大きく影響し,これがNMRシグナル積分値に影響を与える。そこで,これを克服する新規NMR測定法を開発した.また,木質生分解時に生じる二次代謝物を安定同位体標識し,NMR試料セル内で直接観測する手法と質量分析法を組み合わせて,生分解過程における菌体外代謝物の動的な変化と細胞壁成分の構造変化の観測を行った.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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