研究課題/領域番号 |
24880025
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
久野 裕 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (70415454)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | オオムギ / 形質転換 |
研究概要 |
本研究では、オオムギの高効率形質転換系を確立することを目的として、形質転換の成否に関わる遺伝因子を明らかにする。研究期間内で、①形質転換が可能なオオムギ品種「Golden Promise」(以下「GP」)と形質転換が困難な品種「はるな二条」 (以下「はるな」) を交配して得た染色体置換系統(以下BC3F7-HGP)を用いた遺伝学的解析、②形質転換に関わる遺伝子の網羅的な単離・解析、ならびに③形質転換に関わる植物ホルモンの同定等を行う予定である。 本年度は、初めに「GP」と「はるな」の培養特性を調査した。その2品種由来の未熟胚を用いてそれぞれカルス誘導実験を行った結果、「GP」からは黄色で堅く細かいカルスが誘導されるが、「はるな」からは白色で花びらのような柔らかいカルスが主に誘導された。これらのカルスは、次年度の遺伝子発現解析やホルモン分析に供与する。 次に、染色体置換部分と形質転換の成否に関わる形質遺伝子座の対応を取るために、BC3F7-HGPを用いて形質転換体を試みた。形質転換には、バイナリーベクターpIG121Hm(GUS遺伝子とハイグロマイシン耐性遺伝子)を保有するアグロバクテリウム株「EHA101」あるいは「AGL1」を用いた。まず、選抜した21系統由来の未熟胚を用いて慣行法でアグロバクテリウムの感染実験を行ったが、ハイグロマイシン耐性カルスは得られなかった。それらの未熟胚からは「はるな」型の白色の柔らかいカルスが誘導されていた。さらに、他の20系統を追加したが、いずれの系統からもハイグロマイシン耐性カルスは得られなかった。 BC3F7-HGPでは、その染色体の大部分が戻し交雑によって「はるな」型に置換されているため、形質転換が上手くいかなかった。次年度以降は「はるな」と「GP」の組換自殖系統(F10-HGP-RIL)を用いて同様の解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
染色体置換系統を用いたアグロバクテリウム感染実験によって抗生物質耐性遺伝子を選抜できなかったので、研究がやや遅れていると感じている。しかし、オオムギ品種「Golden Promise」と「はるな二条」における培養特性を調査してそれぞれの特徴を見いだしたことは、次年度の研究に生かされると感じている。また、次年度に行う予定のカルスにおける遺伝子発現解析とホルモン分析のための試料サンプリングは完了しており、この点に関しては順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、「染色体置換系統」ではなくシンプルに解析できる「組換自殖系統」を用いて、遺伝学的解析を行う。特に、アグロバクテリウム感染実験だけではなく、カルス誘導実験や再分化実験による培養特性検定を行うことにより、形質転換に関わる遺伝的要因を一つずつ絞り込む予定である。また、「Golden Promise」と「はるな二条」を交配したF2世代の段階で培養特性試験を行い、「Golden Promise」型の特性を持った系統のみを選抜する方法で解析集団を作製する。 一方で研究計画通り、カルスの遺伝子発現解析とホルモン分析を行う。「Golden Promise」由来のカルス特異的発現遺伝子を単離するために、マイクロアレイ法を用いて2品種由来カルスでの発現解析を行う。供試材料として、増殖中のカルス(継代培養して1週間後のカルス)と再分化途中のカルス(再分化培地に置床して1週間後のもの)を用いる。また、増殖中のカルスならびに再分化途中のカルスにおける植物ホルモン品種間差異を明らかにするため、植物ホルモンの分析を行う。植物培養に関わるオーキシンとサイトカイニンを中心に分析する。2品種間で差が出た植物ホルモンについて、マイクロアレイの結果(関連遺伝子の発現)と比較する。
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