研究課題
寒冷地に生息するザゼンソウは、発熱植物として知られている。これまで、ザゼンソウを用いて研究を行う過程で、花の発熱量とミトコンドリア量には正の相関があり、活発に発熱している花はミトコンドリアを豊富に含むことを明らかとした。さらに発熱前駆組織から発熱組織へと成長する際に、呼吸やミトコンドリア機能に関わる遺伝子の発現が上昇することを明らかとした。したがって、発熱細胞における活発なミトコンドリア生合成は転写レベルで制御されていることが示唆されたが、その制御機構については不明な点が多い。そこで本研究では、成長ステージの移行にともなって変化するミトコンドリア動態に着目し、それを支える転写制御機構の解明を目指している。当該年度はまず、発熱しているザゼンソウの花のcDNA配列解析を行い、発熱器官である花において発熱期に発現が活発になる遺伝子を多数同定した。次に、ザゼンソウの葉からゲノミックDNAを単離して、各遺伝子内に切断部位を持たない制限酵素を選んで制限酵素処理を行った。その後、アダプターを結合させて、既知配列とアダプターに特異的なプライマーを用いたPCRを行うことにより、各遺伝子の上流領域を単離して、増幅した未知領域配列の解析を行った。現在、得られた複数遺伝子の上流配列を比較して、共通のシス配列が含まれるかどうかについて検討中である。併せて、ゲノムデータベースを保有するモデル植物における当該遺伝子上流配列に対しても比較検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
当該年度は、発熱しているザゼンソウの花のcDNA配列解析を大規模に行うことにより発熱器官である花において発熱期に発現が活発になる遺伝子を多数同定することができた。そのため、解析対象となる遺伝子の数は当初の予定よりも増えたため、各遺伝子の上流領域の単離に時間を要したが、一方で、in silicoで解析する上流配列の数も増えたため、結果的に配列の比較検討を効率よく進めることができた。
新規のシス配列が得られた場合には、ナノ磁性ビーズを用いた方法や酵母ワンハイブリッド法により転写因子候補の同定を行う。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 76 ページ: 1990-1992
doi:10.1271/bbb.120434
http://www.miyazaki-u.ac.jp/ttkikou/tt-res/y_inaba/