今年度は、解析対象としている遺伝子の機能を明らかにする目的で、これまでに構築した7種類の機能未知遺伝子のうち6種類の遺伝子の増幅株と破壊株を用いて、グルタミン酸過剰生産誘導性ストレスに対する応答性を昨年度に引き調べた。しかし、増幅株、破壊株どちらについても十分な再現性を認められる実験結果が現時点では得られておらず、明確な結論を下すのが難しい。増幅株および欠損株の再構築を含めて実験材料を見直し、実験条件を再検討中である。昨年度完了していなかった残り1種類の遺伝子の破壊株構築についてもプロセスを見直しながら継続している。また、機能未知遺伝子上流領域に存在すると想定されるストレス応答性プロモータを同定する目的で、昨年度構築したGFPをレポーターとする系を用いてプロモータアッセイを試みた。まだ培養条件や測定条件を含め検討を重ねている予備的な段階にあるが、ある程度の定性的な評価は可能なことが分かった。しかし、現在の実験系ではGFPの存在量を再現良くかつ定量的に評価して、どの領域がストレス応答性プロモータを含むのかどうかの判断は難しい。自家蛍光の影響をどのように排除するか、どのように測定値を標準化するかが現時点における主な課題である。RFPをレポーターとする系も構築し、どちらの系がコリネ型細菌におけるプロモータアッセイとして優れているかを検討中である。今後は、これまでに構築した研究基盤を発展させ、ストレス応答性遺伝子の機能を明らかにするとともに、ストレス応答性遺伝子産物ないしストレス応答性プロモータを利用した有用物質生産系の開発を続けたい。
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