本研究は、近代化の家庭において銀行に代表される近代的な金融機関にその機能が代替されると考えられてきた回転型貯蓄信用講(ROSCAs)の複線的な発展の方向性について、伝統的な無尽講から出発しながら日本の農村部で強く生き残った無尽会社と、インドネシアの農村部で現在活動を活発化させ、会社組織となるものも現れつつあるarisan motor(バイク講)とを比較しつつ検討する。本研究は、いまだ整備が不十分な低開発国における農村金融市場の内発的な発展に関する展望を、日本の歴史的経験を参照することによって切り開くことを最終的な目的としている。 本年度の到達点は、以下の3点に整理される。 第一に、前年度3月に行った日本農業経済学会での報告に基づき、論文の執筆を行った。現在、原稿はほぼ完成状態にあり、最終的な確認の上、学術雑誌に投稿の予定である。 第二に、日本の無尽会社に関する主要な史料を、国立国会図書館、徳島県名西郡神山町、長野県飯田下伊那地域などで完了した。現在、データ入力を行い、論文を作成中の状態である。 第三に、日本の個別家計における無尽の重要性について、1931年から41年までの家計調査に即して確認作業を行っている。データの入力が完了し、東京大学社会科学研究所の加瀬和俊氏が主催する家計消費史研究会にて報告をすでに行い、近日中に活字化の予定です。
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